社会への影響と今後の期待

この研究成果がもたらす意義は大きく三つあるといいます。

第一に、正確かつ迅速な病理診断への貢献詳細な遺伝子プロファイルが明らかになったことで、孔道がんの見逃しや誤診を減らし、早期治療につなげるための手がかりが得られました。

第二に、新たな治療選択肢の可能性孔道がんで高頻度に認められるPIK3CAなどの遺伝子異常は、特定の分子(遺伝子やタンパク質)にだけ作用する「分子標的薬」の有効性が期待できることを示しています。これまで限られていた治療の選択肢が広がる可能性があります。

第三に、孔道がんの生物学的動態の解明への貢献。今回の知見は、孔道がんががんとしてどのように発生・進展するかというメカニズムの理解を深めるうえでも重要な一歩となります。

大阪大学大学院歯学研究科の廣瀬勝俊助教は、

孔道がんは私が歯科医師になるずっと以前から知られている病気であり、診断の難しさからこれまで多くの病理医(口腔病理医)を悩ませてきました。本研究では、孔道がんの遺伝子異常を明らかとすることで診断の手掛かりを作ることができました。本研究成果が口のがんで苦しむ患者さんはもちろんのこと、診断に悩む病理医の一助となれば」

と話しています。