「保護法益」(何を守るのか)が大事なわけ~刑法は出番が少ないほうがいい~

「保護法益」とは、法律によって守ろうとしている具体的な利益や価値のこと。

大前提として、福留弁護士が指摘するのは「刑法の謙抑性(けんよくせい)」だ。
「刑法の謙抑性」とは、刑罰は他の手段では社会秩序を保てない場合の『最終手段』であり、必要最小限にとどめるべきという考え方。国家権力の行使による人権侵害を防ぐための原則だ。

福留英資 弁護士
刑法って刑罰を科す法律ですから、科される人の人権に対する強度の制約、侵害になります。場合によってはその人の人生を変えてしまうわけですから。だから極力、刑法は出番が少ないほうがいい。出しゃばらないようにする。だから、刑法のひとつひとつの罪には、解釈の指針として「こういうことを守るんだ」という保護法益があるわけです。刑法が出しゃばると自由に対する過度の制約になりかねないし、人権全般に対する過度な侵害になりかねない。刑法以外の手段で解決可能な問題については、他の法律や条令などで解決する、という考え方です。刑法の本質論レベルでの共通了解ですね。刑法ではこの問題が重要なので、そもそもバランス論はたいして問題にならないのです。

Q 自民党PTは、保護法益について次のように説明しました。
「保護法益は国旗を大切に思う国民感情を保護。将来に対する抑止目的も保護法益の一部としてあるということは、社会一般的に共有化されている認識」
この何が問題なのでしょうか。
福留英資 弁護士
「国旗を大切に思う国民の感情」(多くの場合、国民の多数派)を保護するために、国の現状なり政策なりに対して異論を述べるための象徴的表現として国旗損壊を用いる一部国民(多くの場合、少数派)の表現の自由を抑制するということになります。表現の自由の保障が最も問題になる場面は、政治的少数派が、少数である現状を変えるための政治的表現についてです。これを抑制することを目的としている、とあからさまに述べたということになります。「将来の抑止目的」は、刑罰で規制することでそのような行為を抑止するという威嚇、ということですから、よりあからさまだという感想を持ちます。それから、このように保護法益が示されたことで、外国国章損壊罪とのバランス論は問題にならない、ということが明確にされた、という点は押さえる必要があるとも思います。