“ん?”から“確かに”へ――手元に残る言葉の作り方
これまで自身と年齢の近い主人公を書くことが多かった兵藤さんにとって、みなとのような親世代の日常を描くことに不安もあった。
「自分の親と同い年くらいの人物を描けるのか、という不安はもちろんありました」
一方で、主人公の中にある“芯”や、“日常の中で大切にしていること”については、自分自身の感覚を重ねられたとも話す。
「どの人物にも少しずつ自分の“分かるな”が入っている感覚がありました。だからこそ、いい距離感で向き合えたと思います」
現在も複数の作品を執筆する中で、特に大切にしているのは、「1話ごとに、きちんとメッセージを入れること」だと言う。その上で、兵藤さんが脚本を書く際に意識しているのが、“見終わった後に手元に残る言葉”だ。
「流れていく言葉ではなく、聞いた時に『ん?』と疑問を感じて、その後に『確かに』と納得してもらえるような、日常に根づく言葉になればと思っています」
作品全体が重くなりすぎないよう、“さかな組長”(大江戸海弥/演:松山ケンイチさん)のコミカルな表情芝居やダジャレのような笑いの要素を入れることで、「楽しかった」という余韻につなげることも意識していたという。
以前は、セリフも抽象的に書くことが多かったという。しかし、『時すでにおスシ!?』を通して、より“具体的に描くこと”の重要性を強く実感した。
「“何を伝えたいのか”を考えた時、主人公の具体的なエピソードや言葉として描くことが、とても大事なんだと感じました」
今回の作品では、“手”も重要なモチーフの一つだ。
「鮨は“手で握るもの”なので、“手”を大事に描きたいという思いがありました」と兵藤さん。
主人公の手が、誰かの背中を押す場面もあれば、その息子にとってはプレッシャーとして映る場面もある。
「前向きな意味を込めた手でも、誰かにとっては違う意味になる。その視点も、渚の目線から丁寧に描きたいと思っていました」と、鮨を握るだけではない“手”の描き方を語る。
感情を説明するのではなく、具体的な行動や言葉に落とし込む。その積み重ねが、本作の温かさもあるリアリティーにつながっている。














