「ナフサ不足」という大雑把な括りからの脱却を

今後の見通しについて柳本氏は、春先に重なった工場の定期修理が完了し、夏頃には価格転嫁が進むことで、ある程度の供給回復と目詰まりの解消が見込まれると語る。「一般市民は想定以上に恐れる必要はありません。ポテトチップスが消えるわけではなく、パッケージデザインが少し変わる程度で済むでしょう」。

しかし中東の紛争が続く限り、根本的なリスクは消えない。その上で柳本氏が政府に強く求めるのは、「目詰まりが起きているだけだ」という大雑把な説明をやめることだ。本当に必要なのは、トルエンや特定の樹脂といった「限定的に不足している製品」のサプライチェーンを個別に把握し、官民一体で代替調達ルートを構築するピンポイントな支援である。

「今、原料が手に入らずに事業が止まっている方々がいるのは、完全に不公平な事態です。本当に大事なところに国のリソースを割いていく必要があります」(柳本氏)

「ナフサ不足」「目詰まり」という大きな主語で一括りにされることで、深刻な部分への対策が後回しにされている。その代償を最前線で払わされている現場の人々を救うため、的確な処方箋を打つべき岐路に立たされている。

放送後、柳本浩希氏からのコメント追記

この放送後、5月25日の高市首相の会見では、最後に石油化学のチェーンの画像が出され、ナフサおよび製品の総量というざっくりとしたメッシュではなく、そこから得られる具体的な石油化学製品および加工品の具体的な内容が提示されました。

その中で、「不足製品への振り向け調整」という文字と共に、石油化学製品の在庫の偏りを是正していくことが示されています。これは、「ナフサは足りているけど、足りていない」という本放送の主旨と合致するところで、政府の発言は「ナフサは足りている」以上に具体的かつ踏み込んだ内容になってきたと感じています。

今後、民間企業と政府が協力して不足している分野の製品の供給を回復させ、いまモノがなくて困っている方々にしっかりとモノが行き届くことを切に願います。私も微力ながら業界の情報分析、調達支援、コンサルティングを通じてサプライチェーンの健全化に向けた努力をしていきたいと思います。

(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2026年5月22日放送「足りてる?足りてない?いちから学ぶ『ナフサ』」より)