古文書の妖怪に魅せられ、唯一無二の「妖怪書家」へ

6歳ごろの逢香さん

 逢香さんの原点は、幼少期にあります。もともと書道の先生をしている母の影響で、幼い頃から墨と筆が身近な環境で育ちました。

 その後、奈良教育大学の書道科に進学。寝ても覚めても書に向き合う日々の中で、彼女の運命を変える出会いがありました。

 (書家 逢香さん)「変体仮名を書くために古文書を見ていたんです。昔から古文書は好きだったのですが、そこに描かれていた妖怪たちがあまりにも愛おしく、かわいくて。一気に虜になりました」

妖怪の墨絵「I am a 妖怪書家」

 文字と書、そして水墨画。古来の文化に、彼女が愛する「妖怪」を現代風に融合させました。世界に二人といない『妖怪書家』が誕生した瞬間です。

「黒い妖怪ウォッチ」

 その実力は、一大ブームを巻き起こしたアニメ『妖怪ウォッチ』の墨絵(「黒い妖怪ウォッチ」)を2023年に手掛けたことで広く知られるようになり、奈良市美術館での個展で1万人を動員するなど、妖怪書家として唯一無二のアーティスト活動を広げます。

 一方で、本来の書家としても世界遺産・金峯山寺や、橿原神宮の御鎮座百三十年記念大祭で揮毫するなど、伝統と現代を繋ぐ活動を精力的に続けています。

 さらに、墨を使った逢香さんならではの活動も始めました。一般社団法人『モノモン』の設立です。「モノモン」とはモノクロモンスターの略、墨で描く妖怪のこと。

 逢香さんは、大阪府の特別支援学校高等部で書道教諭をしていた経験から、障害のある子どもたちや支援の必要な子らが、自ら墨で妖怪を描くことで、表現する喜びや感性を引き出し、その作品を展示・販売するしくみ作りに取り組んでいます。表現者として認められることが、自己肯定感の向上につながれば、と逢香さんはいいます。

 文化としての書を、様々な角度から幅広く広めたい――その想いが、彼女の筆を動かす原動力となっています。