メディア(特にSNS)が認知バイアスを利用して排外主義を広めている

旧石器時代から続く進化の過程において、人類は生き延びるために恐怖や不安、怒りや抗争などネガティブな情報に対して、敏感に反応する脳の仕組みを身につけた。そのような認知の仕方(現在では「バイアス」と呼ばざるを得ない傾向)を、現代人も「認知の不変要素」として引き継いでいる。

具体的には、当たり前でポジティブな真実などよりも、恐怖や不安などネガティブな感情をかき立て、怒りと抗争に関わる情報の方が、たとえデマや嘘であろうとも人びとの関心を強く引き、結果的に広がりやすいのである(ジェラルド・ブロネール著『認知アポカリプス』みすず書房)。残念ながら実際、フェイク情報の方が事実の6倍のスピードで拡散するという(シナン・アラル著『デマの影響力』ダイアモンド社)。

外国人や移民に関しても、正確でポジティブな情報より、歪んだ排外主義的な話題の方が、人びとの認知バイアスを刺激できる分だけ広まり、記憶に残りやすい。日本に住む外国人の圧倒的多数は罪を犯しておらず、人口あたりの犯罪率も日本人と大差はない(その差も年齢で補正するとほぼ消滅する)。

また(たとえ納付率は低くとも)若年層が多いことから給付率が低いため、外国人労働者の払う社会保険料は受け取る額より多く、結果的に少子高齢社会である現代日本の社会保障費を支え手となっている。

そんな当たり前でポジティブな事実よりも、「外国人による治安悪化」や「大量の外国人による生活保護の不正受給」など、人びとのネガティブな情動をかき立てるデマ情報の方が、人びとはついついみたくなり、さらに広めたくなってしまう。

特にクリック数・閲覧数などが経済的利益と直結するネットメディアでは、そのようなバイアスを利用する傾向は顕著で、外国人に関するデマの多くはネットメディア、特にSNSや動画共有サイトを通じて拡散している。

2025年の参院選の前後、多くのマスメディアはファクトチェックなどを行い、そのような外国人に関するデマ情報の抑制につとめた。しかし昨今、マスメディアに対する不信感も影響し、少なくない人びとが新聞やテレビといった旧来からのメディアより、ネット(特にSNSや動画サイト)から多くの情報を得るようになっている。

皮肉なことであるが、マスメディアに不信感を抱く人が主張する「偏向(報道)」という問題は、SNSや動画共有サイトで流れる情報にこそ当てはまりやすい。マスメディアは、少なくとも規範としては「真実性」を表明し、デマや誤情報を流せば一定の批判と制裁を受ける。

しかしSNSや動画共有サイトでは、経済的利益のための「バズり(閲覧数)」が優先されるため、(たとえ制作者・発信者自身はデマと分かっていようとも)前述の認知バイアスを利用した排外主義的なコンテンツが数多く生産され、流通する。

さらにネット上のコンテンツ接触については、アルゴリズムに基づいた情報の選択的接触(フィルターバブル)が生じやすく、結果的に排外主義的な情報ばかり受け取る人々をも生み出している。

ここで2025年調査の結果を一つ紹介しよう。前掲の「日本社会の治安・秩序が乱れる」との設問に対し、SNSを「よく使う」人たちは(「そう思う」と「ややそう思う」の合計で)84%が賛同していた(「そう思う」人は46%と全体の半数近い)。

一方、「ほとんど使わない」という人の賛同率は67%(「そう思う」という人は20%)と、17ポイントもの大きな差が出ている。また、新聞を「よく使う」人では賛同率は61%(「そう思う」人は16%とさらに低い)、あるいはテレビ(報道・ニュース番組)を「よく使う」人も70%(「そう思う」割合は23%)と、SNSを「よく使う」人と比べて15~24ポイントもの差がある。

つまり、よく接触するメディアによって「外国人による治安悪化」という言説に対する賛同率が大きく異なっているのだ(なお、世代別にみても接触メディアによる差異は同様の傾向であり、世代差による疑似相関の可能性は低い)。