経済的な理由などから子育てに悩む親たちは少なくありませんが、福岡県久留米市で始まったユニークな子育ての取り組みが注目を集めています。
◆「実家よりも実家に近い」場所

おいしそうにご飯を食べる親子。久留米市にあるこの施設では毎週金~日曜日、無料で食事を提供しています。習い事教室や職業セミナーなども行われています。2020年にスタートした「じじっか」。集まったみんながほっと一息つける、「実家よりも実家に近い」場所になるようにとの思いが込められています。現在、233世帯が登録しています。
◆シングルマザーの気持ちから生まれた

きっかけは8年前、シングルマザーが集まって団体を立ち上げたことでした。
中村路子さん「マジで金ない。ガス、電気、水道まで止まりよった」
樋口由恵さん「私も携帯もしょっちゅう止まる、毎月止まる」
中村路子さん「でも、しっかり働いているんですよ。働いても働いても、なぜか。自分たちも苦しかったし」
田村貴美子さん「寂しさがあったけん、みんなで頑張ろうっていう会を作っとった感じやね」
◆「食べるご飯がない」……言えない本音が

バーベキューや花見などのイベントで交流を深めていくにつれ、お互いの悩みを打ち明けるようになったといいます。
樋口由恵さん「仲良くなればなるほど、言えないような話をみんな言ってくれるようになって。食べるご飯がないとか、そういう話がちらほら出てきたり」
中村路子さん「私たちもどうやって運営していけるかわからんけど、ひとまず場所が絶対に必要だっていう確信のもと、ここができた」
◆助け合って“大家族”に

「あんまり見せびらかしたらなくしたらいかんけんが、ちゃんと直しとかな」「買ってもらえん人もおるっちゃけん、考えて出さないと」
「じじっか」では、多くの大人の目が行き届いています。いわば大家族のような関係です。
子供「きょうだいじゃないけど、じじっかの中ではきょうだい」
能木明菜さん「子育てに関して分からなかったときにいろいろ相談できたりとか、金曜と土曜とかご飯を食べにおいでとか言ってくれて、ちょっと楽ができる。すごく助かってるなと思います」
「じじっか」には、母親たちの意見から生まれた様々な工夫が施されています。店で販売されているように並べられた子供用の洋服やランドセル。これらは全て、「じじっか」に登録した人は自由に持ち帰ることができます。
代表 佐藤有里子さん「稼ぐだけじゃなくて、出費を抑えてやりくりしましょうと。かわいくディスプレイしてお店屋さんで買うような感じで、お母さんが、みんなが選んで持っていくという楽しみ。寄付した人のお気持ちも大事にしながら、そういうスペースを作っている」
◆「習い事をさせたい」切実な思い

ダンスやプログラミングなど無料で参加できる教室も、子供に習い事をさせたいという思いから生まれました。講師を務めるのも「じじっか」のメンバーです。
ダンス講師 稲益幹子先生「仕事でダンススクールを経営してて、“じじっか族”に入ってここでは無料で教えています。中学生の娘は学校に行けてないんですよね。でも実際ここに通うようになって、人とのコミュニケーションができるようになったり。そこが一番助かったなって」
「じじっか」を支えているのは、行政からの委託費や財団からの助成金に加え、様々な個人や団体、企業からの寄付です。
石田誠さん「多いときはここもパンパン、ここもパンパン、本当に助かっていますね」
12月23日には、地元の筑邦銀行から、クリスマス用のお菓子が寄付されました。
代表 佐藤有里子さん「こんなに大きなプレゼント、お菓子を1人ずつ渡せるのは、私たちも心が温かくなっています」
◆他の地域に広がる「じじっか」

さらに12月から大牟田市でも、この「じじっか」の取り組みがスタートしました。オープンから1か月、毎週金曜日に親子食堂を開いていて、毎回20人以上が参加しています。
子供「家では一人っ子だから遊んでもらえる人がいないけど、じじっかに来たらみんなと遊べるので楽しい」
じじっか・おおむた 岩倉美穂さん「もちろんシングルマザーもいますけど、やっぱ共働きとかも子供取り残されたり寂しかったり、忙しかったりするんで、ここは子育て中のお母さんとかお父さんとか、気軽に来てもらえる親子の居場所づくりで暮らしをシェアするみたいな」
齊木聖子さん「今は週に1回なので、もっと回数を増やしたい。行けば誰かがいて話を聞いてもらえるな、そこにいれば誰かと遊べるな、そういう場所になったらいいと思います」
◆遠慮せずに飛び込んできて

苦しいときも本当の「家族」のようにお互いに支え合う。シングルマザーが集まって始めた小さな取り組みが今、大きく広がろうとしています。
代表 佐藤有里子さん「寄り添ったり力を合わせることがとても大事な時代になっていると思います。(困っている人は)家族になってぜひ参加していただいて、知り合うことから始まると思いますのでお気軽に、あまり遠慮しないで声掛けいただければ」














