エルニーニョ現象発生で本来は冷夏になるはずなのに

――今年の夏も暑くなるという予想の根拠は何でしょうか。

森田 まず、温室効果ガスの増大による地球温暖化の影響で、大気全体の温度が高くなっていることが大前提です。

一方で、今年の夏はエルニーニョ現象が発生する確率が60%と高くなっています。実は、私たち気象予報士の常識では、エルニーニョ現象が発生すると、通常は冷夏になると考えられているんです。

冷夏になるとともに、大雨も降りやすくなります。エルニーニョ現象の影響で、日本では1993年に戦後最悪の冷夏になり、8月に鹿児島県内で集中豪雨が発生しました。つまり、エルニーニョ現象が起こるにもかかわらず猛暑になると予想されているのは、これまでにない新たなケースなんです。

――そもそもエルニーニョ現象とは、どのようなものでしょうか。

森田 太平洋赤道域の東部で海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。海面水温が高くなると上昇気流が起きて、その北側では下降気流になります。そうなると日本では、夏は湿った空気が下降して、冷夏になって大雨が降りやすくなり、冬は暖冬になります。

エルニーニョの仕組み(ウェザーマップ作製、以下同様)

エルニーニョとは逆の異常気象に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続くラニーニャ現象があります。日本に限って言えば、冬は寒くなり、夏は猛烈に暑くなります。

エルニーニョはスペイン語で「男の子」や「幼子イエス・キリスト」、ラニーニャは「女の子」を意味します。もともとペルー北部の漁民が、クリスマスの頃に魚が獲れるようになる小さな暖流をエルニーニョと呼んでいました。

――今年の夏はエルニーニョ現象が起きる可能性が高いのに、なぜ暑くなることが予想されているのでしょうか。

森田 様々な要因があると考えられます。先ほど述べた地球温暖化の影響や、海面水温の上昇によって、地球全体の大気の温度である層厚温度がもともと高くなっているのが一因です。今年の層厚温度は、2024年や2025年よりは低いものの、平年より高くなっています。わかりやすく言えば、大気の温度が上がって膨張している状態です。

海面水温が上昇している理由として、最近は太平洋で十年規模振動という現象が起きているとみられています。原因はよくわからないけれども、北太平洋のある部分が10年ほどの規模で温かくなったり、冷たくなったりを繰り返しています。

それに、大気汚染の問題が以前よりも解決してきて、空気がきれいになったことで、海面水温が上昇しているのではないかと指摘する学説も出てきています。

――つまり、そのような要因が、エルニーニョの影響を上回って、今年の夏の暑さにつながるということですね。

森田 はい。

――今年の夏が暑くなると考えられる、日本特有の要因はありますか。

森田 日本特有の要因は、日本の上空でチベット高気圧と太平洋高気圧が重なることです。高気圧が重なれば当然温度は上昇します。2025年も重なったことで、大変な猛暑になりました。

――2つの高気圧が重なるのはどのような理由ですか。

森田 エルニーニョ現象と同じことがインド洋でも起きていて、ダイポールモード現象と呼ばれています。赤道の海域はどこでも海面水温が高くなっている状態です。

インド洋の海水温が上がることで、北ではチベット高気圧が強まります。そして太平洋高気圧が日本の本州付近に張り出すことで、2つの高気圧が日本上空で重なることが予想されています。去年ほどではないものの、今年も猛暑になる可能性が高いでしょう。