今回の評決がSNS企業側の対応を加速させるか

行政による対策が効果的に進まない中、SNS企業側の責任を認めた今回の評決は、企業側に何らかの対応を迫る点で注目される。

SNS企業もこれまで10代の利用に関して対策を進めてきた。メタやTikTokなどは、10代向けの利用時間管理機能や保護者向けの監視ツールなどを導入している。

ただ、今回の司法判断には「現在の状況は許容できない」というメッセージが含まれていると受け止める向きもある。

すでに述べたように、同様の訴訟は全米で2000件を超えている。サンタクララ大学ロースクールのエリック・ゴールドマン教授は「今回、原告側が示した基本的な主張が陪審員に受け入れられた。ほかの裁判でも同じような結論になる可能性は十分ある」と指摘する。今回の判断が波及すれば損害賠償額は莫大となる可能性がある。

サンタクララ大学ロースクールのエリック・ゴールドマン教授

今回の裁判はあくまで一審の評決であり、最終的な司法判断が確定するまでには数年かかるとみられる。ただ、ゴールドマン教授は「現在の状況が今後も続くとは考えにくい」と述べ、最終的な司法判断を待たずに企業側がSNSの設計を変更する可能性が高いとの見方を示した。

一方で設計をどの程度変更するのか、その線引きは難しい。

ゴールドマン教授は今回の評決について「今回、陪審は個別の被害事例を見ながら、SNS全体のあり方に影響する判断を下した形になり、議論に偏りが生じた可能性がある」と話す。

もちろん、子どもたちの安全が重視されるべきであるのは言うまでもない。その一方で、SNSで事業展開し生計を立てる人もいる。仮にアルゴリズムの設計が変更されるとなれば、大きな影響が及ぶ可能性がある。

現地メディアも専門家の話として、これまでSNSを通じてアイデンティティーを確立してきた性的マイノリティー層などが、規制によって影響を受けるのではないかと懸念する声を伝えている。対面よりもオンラインの方が自己表現をしやすいと感じる子どもがいるのも事実だ。

繰り返しになるが、今回の評決はまだ一審の判断に過ぎない。しかし、SNS企業の設計や運営のあり方にまで責任が及び得ることを示したことで、業界のビジネスモデルに影響を与える可能性がある。SNSと社会の関係が転換点に差しかかる中、今後の動向に注目していきたい。

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〈執筆者略歴〉
小川 健太(おがわ・けんた)
2009年にCBC(中部日本放送)に入社。
アナウンサーとして報道番組のフィールドキャスターを担当したあと、報道部に異動。記者として愛知県警記者クラブや、司法キャップ、愛知県政キャップなどを歴任し、2023年8月からJNNロサンゼルス支局長(現職)。

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