前向きな姿勢を好むWBCファン
最後にちょっと目先を変えて、WBCファンが何を「善し」とし、何を「善しとしない」のかを、好きな言葉・嫌いな言葉から探ってみます。
人の信念・信条などを真正面から扱うと、問いも答えも難しくなりがち。そこでTBS総合嗜好調査では昔から、同じ単語を選択肢に「好きな言葉」と「嫌いな言葉」をいくつでも選ばせる質問を実施(注3)。答えやすいのに、回答者の人柄をそれなりに浮かび上がらせる、絶妙な質問と自負しています。
さて、好きな(嫌いな)言葉で、WBCファンとその他で選択率の差が大きい上位7つを、WBCファンの選択率順に並べたのが次の横棒グラフ。

これを見ると、WBCファンは、他の人との善なる関わり方(誠実、信頼、やさしい、絆)や、厳しい状況に向き合う心(希望、勇気)といった「前向きな姿勢」をより好んでいる様子。
逆に、他の人との関わりの断絶(未練、別離)や瞬間的な(浅薄な?)評価(エモい、バズる、映える)、昔ながらの価値観(エリート、根性)などは、WBCファンのお気に召さないようです。
WBCファンの好きな言葉をつなげてみれば、「信頼できる仲間との絆を深め、ピンチにあっても希望を捨てず、勇気を持って誠実に事に当たる」といった感じでしょうか。これぞまさに、チームプレーで世界の強豪と渡り合うWBCであり、個人の誠実さでチームを勝利に導く野球そのものといったら、さすがにこじつけすぎでしょうか。
何だか、WBCファンがとてつもない善男善女に思えてきました。そうした人たちが待ち望んだ球春のWBC。テレビ局に勤める筆者としては、やっぱりテレビの無料放送で、できるだけ多くの人に見てもらいたかったなあ、と思うことしきりです。
注1:TBS総合嗜好調査は、衣食住から趣味レジャー、人物・企業から、ものの考え方や行動まで、ありとあらゆる領域の「好きなもの」を調べる質問紙調査です。TBSテレビが、東京地区(1975年以降)と阪神地区(1979年以降)で毎年10月に実施し、対象者年齢は、1975年が18~59歳、76~2004年が13~59歳、05~13年が13~69歳、14年以降は13~74歳となっています。
注2:松坂選手が調査の選択肢だったのは、大リーグでプレイしていた2014年まででした。そのため、日本に戻って21年の引退までプレイしていた時期のデータはありません。
注3:昨年(25年)のTBS総合嗜好調査では84個の単語が対象でした。
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼任。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














