富野監督と八坂先生は宇宙に住みたい?「僕は…」

山本:いかに台本がないかということが皆さんお分かりになったかなと思います(笑)。 ちなみに少し視点を変えて伺いますが、例えば月や火星に行き、やがては「宇宙に住む」という開発を目指す動きもあります。この「宇宙居住」そのものについて、お二人はどう思われますか?

富野:すごく簡単な話で、僕は絶対に住めないと思うし、僕は住む気はありません。火星も月も木星も、どこでも嫌です。簡単な話、「景色がない」からです。人類が地球で生まれ育って決定的に違うのは、緑があるということを知っているし、緑がない土地も知っていること。この違いは決定的だと思っています。

月面基地の概念図(NASA)

山本:あえて伺いますが、例えば宇宙で生まれる子どもがいるとしたら……。

富野:生まれません。絶対に。

八坂:私もね、やっぱり宇宙には住みたくはないですね。「景色がない」とおっしゃるのは私もその通りだと思います。

だから、もしやるんだったら、惑星の大気そのものを変えてしまうくらいの「大風呂敷」を広げた方がいいんじゃないか。つまりテラフォーミングです。

地球の大気も最初からあったわけじゃなく、藻などの生物がブクブクと泡を吹いて、何十億年もかけて作り出したものです。それを他の惑星でもやってみようじゃないかというアイデアで、私の先輩も実験をやっていました。

当時は「くだらんことやってるな」と思っていましたが、21世紀も4分の1が過ぎた今になって、あれは素晴らしい考えだったと見直しています。

富野:僕はまったく逆のことしか思いつきませんでした。テラフォーミングのアイデアを聞いた時、そういうことを言う研究者や科学者と呼ばれる種類の人間は、僕は人類じゃないと思いました。

山本:今、お隣に座ってらっしゃいますが(笑)

富野:だって、テラフォーミングって惑星一つを丸ごと改造しようというレベルですよ? それを人の手で改造できると思えるなんて「めでたい人たち」としか言えません。おかしいんじゃないの、とは言いませんが、めでたい人たちなので相手にしない。

八坂:いやいや、でも地球の環境だって、そうやって生物が作り出したものなんですよ。

富野:だから、その事実は認めてるんです。認めているけれど、それを人為的にできると思うのがめでたいと言っているんです。

八坂:そこは見解の相違ですね(笑)


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