ローカルで育つ子どもたちへのメッセージ

富野氏と八坂氏からにじみ出ているのは、未来の世代への責任と希望だ。

記者の私的な思いも入ってしまうが、2人に自分が話を聞かせてもらう意義を、事前にずっと考えていた。

2人は、これまでも様々なインタビューで、自身の考えや視点を示している。これまでの言葉をなぞるようなことではなく、何を聞き社会に届けるか。

鹿児島から福岡へ向かう新幹線の中で気づいたのは「ローカル」という言葉だった。

自分は人生の大部分を地方で暮らしている。

子どもの頃、『ガンダム』で描かれる宇宙や、星の名前も知らず見上げていた「宇宙」を、ある意味都会や外国より身近に感じることもあった。

宇宙からの視点で地球を見れば、日本のどこにいても、世界のどこにいても、大都会でも田舎でも等しく「ローカル」になる。世界はローカルでできている。

だからこれを聞いてみたいと思った。

「ローカルでこれから育つ子どもたちにメッセージを頂けますか?」

富野:これは子供たちへ、ではなく、大人たちへの呼びかけです。つまり、「自分たちのふるさとというのは、こんなにいいものなんだよ」ということを正確に子供たちに教えてやって欲しいのです。

21世紀が1/4も過ぎてしまえば、22世紀が近いものになってきたのですから、いまだ古典的な「開発」という視点しか持てない現代人は、ただエネルギーを消費する社会を構築してしまって、恒久的に使える社会的インフラの整備を考えてきませんでした。

ですから、「ふるさとの土地の特性と癖を自覚して、再考する時代に突入した」と考え直せれば、「ふるさとの地力はここにある」というメンタリティを再構築できて、子供たちの時代に、希望と夢を投影できると思うのです。

八坂: 人生のコースにあたっては、いくつかの分岐点が現れます。どっちにしようかと自分で判断しなければならない、あるいは外部条件次第でどっちに転ぶかわからない…どちらの場合でもスイッチの位置次第で人生の路が違ってくるという転機です。

どちらの場合でも、あとで後悔しないように行動することが大事だと思います。
「自分で判断する」前者の場合には、考えに考え抜いて選択をする、また、「外の条件でどっちに転ぶか分からない」後者の場合には、自分のできる範囲のことを一生懸命やってその結果を待つ。

力いっぱい考え、行動した末にもたらされた結果には、後々後悔することはないでしょう。「もう少しあっちの方向に頑張ればよかったな」と思って後悔することはあるかもしれませんが、自分でできることを精一杯やっておったとすれば、自分でその結果を受け入れることはできるでしょう。

私の場合は、前者では宇宙研の職員の時に、ある企業のポジションをオファーされたとき。後者ではいくつもありますが、一つは九州大の時代に、木星計画を政府に提案したときです。

どちらの時も、スイッチが逆に倒れておれば今のQPS研究所はなかったでしょう。特に後者の「どっちに転ぶか分からない」場合には、自分の思うとおりにならなかったケースが多いですが、それでも後悔はありません。そのたびごとにやれることは精一杯やってきたと思えるからです。

これからの若い人には、間違いなくいくつもの分岐点が待ちうけています。大学などへの進学、専門のチョイス、就職、恋愛、結婚などなど…それぞれの時点で力いっぱい考え、そして行動して、後々後悔が残らない分岐点となることを切に望みます。

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