■消毒液「原則使わないほうがいい」

真相はどうなのだろうか?事故による子どもの傷害を予防する活動を行うNPO法人Safe Kids Japanに所属し、緑園こどもクリニックの院長をされている山中龍宏先生に最近の傷の処置事情について聞いた。

ーー傷の処置で、消毒液は使わないという声を聞いたのですが、本当でしょうか?


緑園こどもクリニック 山中龍宏先生
「いわゆる昔風の消毒薬、消毒薬と言われていたものは、使わない方がいいとは思います

ーー(やっぱりそうなんだ・・・)では、どのようにばい菌を退治するのでしょうか?

緑園こどもクリニック 山中龍宏先生
流水で洗うだけで十分です。新たに外から何かを加えるのではなくて、自分の体の中から出てきた成分が、傷の修復を助けてくれるんです」

山中先生によると、ばい菌の侵入を防ぐために、ばい菌をやっつけるような細胞、すなわち白血球や切れた皮膚を治すための栄養素のようなものが体の中から傷口に集まってくるという。

ーーじゃあ「流水で洗う→カットバンなど(保護)」のみ・・・ですか?でも、消毒液でばい菌を退治してからの方が早く治りそうな気もするのですが・・・。

緑園こどもクリニック 山中龍宏先生
「それが逆なんです。(消毒液を使うと)傷を修復するために、体の中から出てくる色んな成分が消毒薬によって、うまく機能しなくなることが分かってきたのです。消毒薬で傷を修復するための成分が機能しなくなると、傷の修復にも時間がかかりますし、傷跡が残ってしまう可能性もあります」

傷口を清潔にするのが第一。流水でそれができる程度の傷や汚れであれば、まずそうしてみる。消毒液は、使い方によっては傷を治していく体の働きを鈍くしてしまうこともあるようだ・・・。

さらに、消毒液を使わないことで「傷を比較的早く、傷跡を残さず治す」事にもつながっているという。これまで、どんなけがでもすぐ消毒していたが、傷口に口があって話すことができたとしたら「勘弁してくれよぅ・・・」と嘆いていたのかもしれない。

加えて、先生によると、傷の処置にはほかにも新常識もあるという。傷口は乾かしてかさぶたにして治すというのが主流だったが、いまは傷は乾かさないことが主流になっているそうだ。

「湿潤療法」といって、傷を治そうとする水分を含む細胞が死なないように、サランラップやジェル、湿ったもので傷口を覆う方法で、傷口を乾かすよりも早くきれいに治るという。

これまで傷口には絶対「消毒液」と思い込んでいたが、傷の程度などによっては必ずしもそうとは言えないみたいだ。病院や保健室で流水で処置されても、消毒液をケチっているわけではないんだな。新たな傷口の処置方法「流水であらって、傷口を清潔にする→保護」覚えておこうと思う。