今年2月に行われた世界卓球選手権(団体戦)の代表選考会で優勝し、アジア大会団体代表にも内定した卓球の宇田幸矢(24、協和キリン)。4歳でラケットを握り、各世代の頂点を走り続け、高校3年生で全日本選手権を制覇、若くして日本王者となった。しかしその直後の3月に腰を負傷。そこから大学4年間は、怪我と向き合う過酷な日々を過ごした。
練習すらままならない中、挑んだパリ五輪代表選考会。思うような結果を残せず、五輪への道が断たれた時、「初めて卓球をやりたくないと言った」という。絶望の淵にいた彼を救ったのは、父・直充さんの「お父さんのために戦ってほしい」という意外な一言だった。その言葉を胸に再起した宇田は、再び日の丸を背負う切符を掴み取った。家族の夢を力に変え、試練を乗り越えたサウスポーの覚悟を聞いた。
「父の退職」不退転の決意で歩んだ師弟の道
今年2月、2026年世界卓球選手権ロンドン大会(団体戦)の代表選考会。決勝のコートに立っていたのは、かつての全日本王者・宇田幸矢だった。対するは、昨年16歳で世界ユースを制した超新星・川上流星。世代交代の波が押し寄せる中、宇田は執念の勝利で代表の座を奪い取った。
「本当に強い選手ばかりが集まり、一人しか枠がない中で勝ち切ることができた。ほっとしていますが、ここからがスタート。もう走り出したい気持ちです」
晴れやかな表情の裏には、怪我に泣き、ラケットを置くことさえ考えた「苦悩の4年間」があった。
宇田の卓球人生の原点は、父・直充さんの存在だ。
学生時代卓球に励んでいたが目立った結果を残せなかった直充さんは夢を息子に託し、宇田が中学3年生の時に、指導に専念するため大手化粧品会社を退職するという大きな決断を下した。「息子がうまくいかなかった時、絶対に後悔したくなかった」。その覚悟が、4歳から白球を追ってきた宇田を世界の舞台へと押し上げた。
そして2020年1月の全日本選手権。宇田は張本智和を破り、高校3年生で日本一に輝いた。この経験が卓球人生の大きなターニングポイントとなった。
「(2020年の全日本選手権を優勝して)今までは挑戦していくっていうのが100%だったんですけど、優勝してからは「負けられない」と考えさせられる日々がスタートした」
しかし、日本王者としての自覚が芽生えた直後、運命の歯車が狂い始める。

















