■遺体をそのまま海に・・・ 密漁や人権侵害 知られざる“IUU漁業”とは

2022年11月、静岡県の清水港で水揚げされた、ミナミマグロ。絶滅が危惧されるため、獲りすぎないよう、タグをつける国際ルールがあります。

遠洋マグロ会社「臼福本店」社長 臼井壯太朗さん「ジャパン(日本船)、2022年のJRGWというのは船ごとの番号、1184番目に獲れた魚ということ。タグ番号とどこで獲れたかを毎日、水産庁に報告する義務が日本船にはある」

しかし、一部の船がルールに従わないため、価格に影響が出ているのです。

臼井社長「実際、このタグがついていない魚(ミナミマグロ)も今、流通している。(タグのない魚の)安い値段にダンピングされて、ますます安くなっちゃう。うちの沖で働く漁師もね、本当にみんな頭に来てるんです」

こうした、ルールを守らない漁を、「IUU漁業」といいます。IUUは、「違法・無報告・無規制」の頭文字。

▼違法漁業は、獲ってはいけない場所や方法で魚を獲ること。
▼無報告漁業は、獲った量や産地などを正しく報告しないこと。
▼無規制漁業は、ルールに従わず、魚を乱獲するなどの行為です。

日本の環境団体が引用する海外の論文では、日本に輸入された水産物の24~36%が、IUU漁業によるとの推定も。しかし、市場では・・・

買い物客「今初めて聞いた。日本語じゃないことくらいしかわからない」「地元の魚食べようみたいな感じですか?」

イギリスの環境保護団体は、IUU漁業は乗組員の人権侵害も引き起こすと、警鐘を鳴らします。

環境保護団体「EJF」CEO スティーブ・トレントさん「IUU漁業を行う船の所有者は、発展途上国の安い労働者を使ってコストを減らし、利益をなるべく増やそうとします。乗組員たちは劣悪な環境で生活させられ、暴力を振るわれることもあります」

中国のマグロ漁船の映像です。オレンジの布に包まれたインドネシア人乗組員の遺体が、そのまま海へ・・・過酷な労働環境を告発するために、乗組員が撮影したものです。実はこの中国船、日本ともかかわりが・・・

スティーブ・トレントさん「この会社の冷凍運搬船が入っていったのが、日本の清水港です」

清水港で、映像に撮られた中国の会社について聞いてみると・・・

清水港関係者「名前は聞いたことあるが、船のことはわからない。そういえばその名前この頃見ないな」

一方、運送業者からは、こんな本音も・・・

マグロ運送業者「(人権問題は)昔からじゃないですか?(魚が)沢山入ってきてくれればいい。労働環境を考えるより、大変申し訳ないけど(数)入ってきてほしい」

その後、中国の会社から魚を買っていたのは、水産系の専門商社だとわかりました。会社はJNNの取材に対し・・・

専門商社からの回答書「過去に当該企業と取引があったことは事実です。現在、取引はなく、また今後の取引も予定しておりません」

あの映像について、中国の会社に尋ねると・・・

中国の会社(乗組員が死亡した船を所有)「乗組員が死亡したのは事実ですが、病気が原因です。労働問題(長時間労働など)はありませんでした。遺体を勝手に海に流したのではなく、事前に家族の了解を得ています」

そして、自分たちは法律を守り、IUU漁業はしていないと話しました。

日本では、今月から対策がはじまりました。イカ、サバ、サンマ、マイワシの4種類については、輸入する際、IUU漁業ではなく、適法に獲られたという証明書が必要になったのです。

水産庁加工流通課 水産流通適正化推進室長 中平英典さん「IUU漁業のおそれが大きい魚種はたくさんあるが、食卓になじみのあるお魚を、まずは対象にしていこうと」