「両親を信じたかった…何もかも裏切られた」

会見後の控室に入ると、お腹を抱えてうずくまる小川さんの姿があった。

「しっかりしゃべろうと思ったけど…見慣れた親の字。なんども心配していると言ってきていたけれど そういうのが全部嘘だったんだなと」

「(きょうの出来事は一番つらいことでしたか?)今は動揺しているからかわからないけれど、病気になっていた時以上にショックでした。それでも自分は両親を信じたかった。信じていたので何もかも裏切られたという気持ちと、この組織がやっぱり間違っていることが改めて確信できたメリットもあって自分の活動は間違っていなかったと思う事が出来た」
(10月7日 外国特派員協会での会見後の取材で)

「親に愛され、認められたかった」

会見の1週間後、教会は公式見解を発表。会見中止を求めたのは、あくまで「親心」からで、小川さんの病状を公開する意図は無かったとした。

「親心」

はじめて取材した日、小川さんは親への思いについて、こう打ち明けてくれていた。

「母親がすごく大好きで、いじめられても早く母親に会いたいと思って、毎日走って家に帰っていました。自分を愛して欲しいし、気づいてほしいって。親への恨みもあったりとかするんですけど、やっぱり親に優しくしてもらえたりとか、愛された記憶というのはちゃんとあって。いつか、もしかしたら両親が何かのきっかけで間違いに気づいて自分を思って泣いてくれる日がくるのかなと、1%くらい思っている」(今年7月の取材で)

小川さん自身も幼少期から、教会に疑問を抱きながらも“熱心な信者”であり続けた。根底にあったのは「親に愛されたい、認められたいという」思いだったという。

さらに、教会の教えに背くことは教会の「祝福結婚」で生まれた、自分のアイデンティティをも否定することにもなる、とも。

そんな葛藤をいつか両親が分かってくれるかもしれない…こうした「1%」残っていた子どもの期待をも、打ち砕いたのだ。

体調を崩した小川さんはTV出演を控えることに。代わりに私が会見の様子を伝えるために、急いで東京のスタジオへと向かった。雨は、ますます激しさを増している。

小川さんはしばらく療養することを決めた。