なぜ氷は後退している? 鍵を握る「暖かい海流」と地形


特定の地域で大規模な氷の後退が起きている背景には、「周極深層水」と呼ばれる暖かい海流と、海底の地形が関係しています。

「周極深層水」は昔からあり、本来は深海を流れる海流です。しかし近年、気候変動の影響で南極周辺に吹く西風が強まり、海面付近の海水を沖のほうへ吹き飛ばすようになりました。

すると、空いたスペースを埋めるように、深海にあったこの暖かい海流がポンプのように浅い場所へ吸い上げられるようになったのです。地球温暖化で海全体の温度が底上げされていることも追い打ちをかけています。

こうして吸い上げられた暖かい海水が、氷河の奥深くまで入り込み、底から氷を溶かしています。

南極大陸で撮られた写真 ESA/IPEV/PNRA-J. Lacrampe/N. Purvis

さらに致命的なのが、これらの地域の氷の下の地面が、内陸に向かって深くなる「下り坂」になっていることです。

氷を支える地面がすり鉢のようになっていて、内陸にいくほど水深が深くなるため、より大量の暖かい海水が奥まで流れ込んで、氷をどんどん浮き上がらせてしまいます。 一度氷が後退し始めると、歯止めが効かずにさらに溶け進んでしまうという地形的な弱点を抱えているのです。