■次期総裁は「日銀出身」が“暗黙のルール” 名前が上がる2人の「有力候補」
赤荻 歩(TBSアナウンサー)
「脱アベノミクス」という流れがある中で次の総裁に関する話が出ました。2023年の3月9日から10日が、現在の黒田体制での最後の決定会合になり、その後3月19日に副総裁が任期を終え、そして4月8日には黒田総裁が任期を終えるという予定になっています。こうなると2023年の日銀の金融政策、並びに、新しい体制がどうなるかということになってきますね。

末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)
次期日銀総裁候補ですから、候補として名前が挙がってる2人、雨宮副総裁と中曽前副総裁ですね。通常、財務省出身のあとは日銀出身で順番っていうのが日銀総裁の暗黙のルールですね。財務省出身の黒田総裁が2期やったので、次は日銀出身の方で、お2人のどちらかだと思うんですけれども、中曽さんの雰囲気はあるのかなというのが最近の流れだと思っていた。中曽さんはどちらかというと国際会議などにたくさん出てきた人で、グローバルなネットワークがあります。かつてFRBの総裁を務めた、アメリカの財務長官イエレン氏は友達らしいです。
ただ、10年前の日銀・政府の共同声明を変えるという話は、政府だけでできる話じゃなくて、日銀サイドでもちゃんとその話をしてる人はいると思います。後は金融政策に関してもう1回点検・検証した方がいいんじゃないかという、日銀関係者がちらほら出てきていて、なんか日銀の内部から変わってる感じもするんですよね。そうすると、今、日銀の内部にいらっしゃるのは雨宮さんの方で、実はもう総裁に内定していて、そこに向けた動きがもう始まっているというようにも見えるかなと思いますね。そういう意味では7割ぐらいで中曽さんかなと思っていたのですが最近、雨宮さんの可能性も5割ぐらいになってきたという認識です。
■2023年は“円高”が進行? 異次元緩和の“出口”は?
末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)
私は来年、1ドル=120円ぐらいまでいくんじゃないかなと思ってます。例えばアメリカが今は利上げを止めようとしてますけど、やはり利上げをもっとするとかなったりとかもありうるので。あとウクライナの問題がもっと深刻になって、ドルを持ってないと不安だという、いわゆる有事のドル買いみたいなことが起こりやすい社会にもなっていると思うので、それではまた円安になるリスクってのは当然あると思うので、次の日銀総裁はやはりもうちょっと正常化してほしいっという思いが政治側にあるのは事実だと思いますね。なので次の総裁は緩和一辺倒ではない方になるのだろうと。
ただ、マーケット環境が、出口戦略を許してくれるかの方が私は難しくて重要ではないかなと思う。先日の日銀短観によると、輸出企業の想定為替レートが1ドル=130円ぐらいになっていて、あと3円ぐらい円高が進むと輸出企業は一気に為替で損するという話になってくる。日本経済のことを考えるとそろそろ円高もこれ以上いくときついかなっていう感じになってきている。
2022年は円安が進んで、インフレも進行したのが悩みだったわけですけども、インフレももう半年ぐらいで多分ピークかなと。インフレも結構弱まってくるとすれば出口に向かう必要がある。無理やり出口に向かって円高が進んで、企業業績は悪化する。こっちを心配しなきゃいけないんですかってなってくると、意外にそんな余裕はないんじゃないかなと。要するに出口に向かうぞと言って始まって、政治的にももうアベノミクスは忘れるんだみたいな感じで始まったとしても、「意外にも脱アベノミクス路線はできません」という可能性が私は高いかなと思ってます。