『テルマエ・ロマエ』と伊東マンショ
その後、ひょんなことから、あの14歳のときに出会ったマルコさんの孫と結婚することになりました 。彼と共にシリア、ポルトガル、アメリカと世界を転々としましたが、シリアやポルトガルでの生活は、お風呂に入りたくてもシャワーしかない環境でした 。あまりに寒くてお風呂が恋しくなり、「お風呂に入っているおじいさんの絵を描けば、自分もお風呂に入っている気分になれるかも」と思いついたのが、漫画『テルマエ・ロマエ』のきっかけです 。最初は大手出版社に「マニアックすぎる」と断られたりもしましたが、小さな雑誌で始めたら、気づけばマンガ大賞をいただいたり、阿部寛さん主演で実写映画になったり。 自分の積み重ねてきた苦労や欲求不満が、結果として漫画という形になって、皆さんがついてきてくれたんです。
私は天正遣欧使節の彼らと自分が一番似ているなと思うのは、その「流され方」なんです。 彼らも13歳や14歳で、自分の志というよりは、キリスト教組織の思惑や宣伝広告塔として、無理やり海外へ連れて行かれた。 イタリアのヴィチェンツァにある「テアトロ・オリンピコ」という劇場へ行ったとき、フレスコ画を指差して「ここに来た日本人はお前が最初じゃないぞ」と言われました。 そこには400年以上前にそこを訪れた使節団の姿が描かれていたんです。 その後もポルトガルのサン・ロケ教会やエヴォラの大聖堂など、私が行く先々で「昔ここに4人の日本人が来たんだよ」という話を聞かされました。
去年、伊東マンショさんの肖像画を改めて見たとき、なんだか泣きそうになってしまいました。 その目が「ヨーロッパはすごいけれど、本当に疲れました。日本に帰りたい、梅干し食べたい」って訴えかけているように私には見えた。タイムスリップできたら、彼らに「大丈夫? お風呂入りたいよね、私よくわかるから」って声をかけてあげたいくらい、彼らは私にとって、どこか遠くで繋がってる人のような気もしました。














