外為特会は「打ち出の小槌」ではない
また、外為特会(外国為替資金特別会計)が円安によって潤っていることを、「ホクホク」と表現し、財源として大いに期待できるというニュアンスで語ったことも問題でしょう。
確かに外為特会の運用益の大半は米国債の利子なので、ドル建ての利子を円換算すると膨らむことは間違いありません。現に2024年度には剰余金が過去最高の5兆3603億円も出ています。しかしすでに、剰余金の最大7割は一般会計に繰り入れられることになっていて、25年度予算では3兆2007億円が繰り入れられました。うち1兆円は防衛費増額に充てられています。今後、繰り入れ比率を高めたり、さらに円安が進んだりすれば、繰入額を増やすことは一定できるでしょうが、兆円単位の新たな大きな財源になるわけではありません。
もちろん、外為特会の資産はほとんどが米国債なので、円安によって円建ての評価額が上がり、大きな含み益が出ていることは、事実です。しかし、それは円建てに限った話ですし、この資産こそが外貨準備そのもので、国にとっては、虎の子、最後の砦となる外貨なのです。簡単に売却することはできません。
実務的にも、日本が外貨準備の米国債を大量に売却して円資金に変えることは、巨額の為替介入をすることと同じですから、事実上、不可能でしょう。外為特会は、「打ち出の小槌」ではありません。
円安で国内投資増というのは幻想
さらに総理の発言が、「円安によって国内投資が増える」という文脈で語られている点も疑問です。このキャッチフレーズはこれまでも繰り返し謳われてきました。しかし、リーマン危機前、アベノミクス、いずれの円安時も、輸出企業の懐具合は潤っても、結局、国内投資の本格的な回帰にはつながりませんでした。
日本企業が国内ではなく海外に投資をするのは、人材をはじめとする日本国内の供給力不足や、国内需要の低迷など、様々な要因があるからで、為替は主因ではありません。日本は国内投資を増やすべきで、そのために政策支援が必要だという、高市総理の主張に、私は大賛成ですが、円安と直結させる思考は、幻想です。














