長野県軽井沢町で乗客など15人が死亡したスキーツアーバス事故をめぐる裁判です。
在宅で起訴されているバスの運行会社の2人は、「事故を予見することは不可能だった」などとして、あらためて無罪を主張しました。
この事故は2016年1月、県内のスキー場に向かっていたツアーの大型バスが、軽井沢町の国道脇に転落し、乗客の大学生や運転手など15人が死亡、26人が重軽傷を負ったものです。


2021年10月に始まった裁判ではバスの運行会社・イーエスピーの社長=高橋美作(たかはしみさく)被告と、当時の運行管理者・荒井強(あらいつよし)被告の2人が、事故で死亡した運転手への適切な指導監督を怠ったとして、業務上過失致死傷の罪に問われています。

裁判の主な争点は、2人の被告が事故を予見できたか、事故を回避するために必要な措置を講じたかの2点です。
前回の公判で検察は、被告の2人に対し、乗務前後の点呼や運転者の訓練が適正になされないなど管理体制は杜撰で、事故は予見でき、結果を回避する義務を果たしていなかったとして、両被告に禁固5年を求刑しています。


最終弁論で荒井被告の弁護人は、「当時の認識では運転手の技量に不安はなかった、運行管理体制もバス業界全体の基準が定められておらず、どの程度できていれば結果を回避する義務を果たしたといえるものでない」としました。
また、高橋被告の弁護人は「事故の直接的な原因は、運転手がフットブレーキを踏まなかったこと」だとし、「大型二種免許を持っている運転手が、下り坂のカーブでシフトをニュートラルにしブレーキを踏まないことを予見するのは不可能だった」などとしていずれも無罪を主張しました。
最終の意見陳述では、被害者参加人制度で出廷した遺族などに謝罪しながら頭を下げた2人の被告。
荒井被告は「何も言うことはありません」、高橋被告は「これまでに述べさせていただいた通りです」と話し、法廷をあとにしました。
事故で大学生の長男を亡くし、遺族会代表を務める田原義則(たはら・よしのり)さんは、裁判のあと、取材に応じました。


「バスに乗った子どもたちのことをどう考えるのか、道義的責任があればどうしてそんなことが言えるのか憤りを感じた」
バスの運行会社の監督責任をめぐる刑事責任が問われ14回に渡って開かれた今回の裁判。
判決は2023年6月8日に言い渡されます。