アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は政策金利を0.5%引き上げると決めた。景気悪化を警戒して利上げペースを緩めた形だが、12月15日のニューヨーク市場は一時900ドル以上も下落した。ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド、ホリコ・キャピタル・マネジメントの堀古英司氏をゲストに迎え、今後のアメリカの金融政策を分析する。
■景気後退への懸念強まる 0.5%利上げで株価大幅下落
12月14日、今年最後のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利の誘導目標を0.5%引き上げ、4.25から4.5%とすることが決まった。歴史的なインフレ退治のため4回続けて0.75%の利上げが行われていたが、ここに来て景気の悪化を警戒し、利上げペースを緩めた形だ。また、2023年末時点の政策金利の見通しを5.1%に引き上げている。
FRBのパウエル議長は14日、利上げを継続する姿勢を強調した。ただ、今後の利上げのペースについて問われると、次回以降の利上げ幅についてさらなる縮小を示唆した。しかし、2023年のうちに利下げに転じることについては「インフレ率が継続的に2%まで下がると確証を得るまで利下げを考慮することはない。2023年の見通しでは利下げは考えられていない」と否定した。

14日のダウ平均株価は利上げ継続を強調するFRBの姿勢に景気後退への懸念が強まり、売りが先行したが、前日比で142ドルの下落にとどまった。

ところが、15日のダウ平均株価は続落して始まった。下げ幅は一時900ドルを超えるなど全面安となり、終値は前日より764ドル安い3万3202ドルとなった。15日の午後に発表された11月の小売売上高がマイナス0.6%と市場予想を下回る結果となり、景気後退の懸念に拍車をかけたのだ。自動車、自動車部品が2.3%、家具が2.6%、百貨店が2.9%減少するなど年末商戦の中、インフレによる節約志向で必需品以外への支出が落ち込んだ。
また、FRBは14日に2023年のGDP成長率の見通しを1.2%から0.5%に引き下げ、パウエル議長の会見では記者から「0.5%はいい数字とは言えない。なぜ景気後退と表現しないのか」という指摘が出た。これに対しパウエル議長は「GDP成長率がプラスだからだ。景気後退だとは認識していない」と答えた。


今年の3月から利上げを始め、0.75%という3倍速を4回実施したが、今回ようやく0.5で幅が縮小された。市場の期待通りだったわけだが、ダウ平均株価は続落し、3日間で1200ドルも下げたという展開になっている。

――なぜこのように株価が下がっているのか。
ホリコ・キャピタル・マネジメント 最高運用責任者 堀古英司氏:
一言で言うと実質金利の上昇高止まりが嫌気されている形だと思います。市場の期待するインフレ率はFRBが目標とする2%まで下がってきています。にもかかわらず今4.25や4.5という短期金利になりますと、実質金利が2.5%近いと。これは最近にしたら非常に高い数字で、これが高いと実質的に株価の魅力が落ちますし、企業の実質的な金利の負担が増えますし、さらに銀行の貸し出し、調達金利が非常に上がってしまって金融システムも心配になってくると。この辺が複合的に出てきているのだと思います。

パウエル議長は会見で「インフレは目標の2%までは長い道のりになる」、「2023年の間の利下げは検討していない」、「到達金利を再び引き上げることがないとは言えない」、「今後はおそらく0.25%ずつの利上げになる」と話した。
――市場は2023年の後半には少なくとも利下げに行くだろうと言っていたものが「検討していない」と明確に否定されてしまった。

東短リサーチ 代表取締役 加藤出氏:
11月下旬の講演でパウエル議長はこういう話はしてはいたのですが、なかなかマーケットの人の耳にうまく入らず、今回改めて強調したらその見方がマーケットとずいぶん違うということでショックを呼んでいるわけです。