奈良地裁 “犯行は被告自身が決断した結果にほかならず、その意思決定に不遇な生い立ちが大きく影響したとは言えない”

 奈良地裁(田中伸一裁判長)は1月21日の判決公判で、起訴内容をすべて認定したうえで、山上被告に「無期懲役」を言い渡しました。  

 量刑理由の説明で、地裁は「パイプ銃の威力の大きさや、商業施設などが周囲に建ち並ぶ周囲の状況なども考慮すると、公共の静穏や安全を大きく脅かした極めて危険で悪質な犯行」「最終的に安倍元総理を標的に変更したのは犯行直前だが、(事件前日を含む試射など)狙った人物を確実に殺害するための計画や準備は約1年半の長期間にわたっていて、計画性は極めて高い」と指弾しました。    

 争点となった山上被告の生い立ちについては、以下のように指摘。
▽旧統一教会に激しい怒りを抱いたのは、不遇な生い立ちなどからすると、理解不能とは言えない
▽しかし、旧統一教会やその関係者に対し、激しい怒りの感情や思い知らせたいなどの感情を抱いたとしても、銃などを製造して他者の生命を奪うことを決意した意思決定には、大きな飛躍があると言わざるをえない
▽(事件前日に)岡山で安倍元総理を襲撃する機会を得られなかったなど、目的達成の障害となる出来事があった。それらは人を殺してはいけないという社会的規範を改めて認識し、殺人を思いとどまるのに十分だったが、犯行を断念しなかった

「家族をめぐる激しい葛藤や旧統一教会に対する負の感情を長年ため込んできたところ、内心でこれらを健全に解消し、あるいは合法的な手段による解決を模索せず、殺人などの手段を選択して実行した。その実行は被告自身が決断した結果にほかならず、その意思決定の過程に、生い立ちの不遇性が大きく影響したとみることはできない
「被告の生い立ちが人格形成などに一定の影響を与え、犯行の背景や遠因となったこと自体は否定できないが、短絡的で自己中心的な意思決定過程に、生い立ちが大きな影響を及ぼしたとは認められない」 と結論づけ、情状酌量を求めた弁護人の主張を完全に退けました。  

 判決言い渡しの間、山上被告は視線を下に落として、手元の資料を見ながら裁判長の言葉に聞き入っていました。