「引き分け」の裏にある韓国の現実的バランス

日中両国による、この“おもてなし合戦”。軍配はどちらに上がったのでしょうか。

李大統領は「一方の肩を持つことは対立を激化させる要因になる」と発言しています。これは、アメリカの同盟国である日本との安全保障上の連携を重視しつつも、北朝鮮に影響力を持ち、経済的結びつきも強い中国を敵に回すことはできないという、韓国の「バランス外交」の表れです。

日中の対立に深入りせず、双方から利益を引き出す。この李大統領の冷徹な現実主義を前に、今回のおもてなし合戦は「引き分け」に終わったと言えるかもしれません。

仏教文化が中国から朝鮮半島を経て日本へ渡ったように、東アジアの3カ国は歴史的に深く繋がっています。しかし、現状は「中韓対日本」の構図を作ろうとする中国と、それを引き留めようとする日本という、不安定な均衡状態にあります。

間もなく衆議院選挙が始まります。有権者である私たちは、単なる感情的な外交ではなく、こうした東アジアの複雑な力学を見据え、どのような近隣外交を目指すべきなのか。その答えを託せる相手に、一票を投じたいものです。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。