「素人の私にできるのか」元患者らと面会を始める中”葛藤”も

事件の後、西澤さんのクリニックに通っていた800人以上の患者が行き場を失いました。兄の代わりにはなれないけど、自分にできることはないか。事件から3か月後、伸子さんは始めたことがあります。

 クリニックに通っていた元患者らが「オンラインでの集い」を始めたことを知り参加することにしたのです。

(元患者)「絶対治りますよって言ってくれたんでね。西梅田のクリニックでもちゃんと対応してくれたなって今になって思いますね」「一言で言うと孤独を癒すための居場所っていう感じですかね。当事者同士で思い出話とかする中で安心できることがあった」

伸子さんが「前を向く理由」、それは自分のためでもありました。

 (伸子さん)「自分が悲しいっていうことを多分見つめていないんだと思います。見てしまうとたぶん止まってしまうというか、元患者のことをっていうことにすることで、自分がもしかしたら救われているのかなって、自分の悲しみを見ずにすんでいる」

今年4月、伸子さんはある人を訪ねていました。その相手は心理士の土田くみさん。伸子さんは元患者らと接する中で「本格的に心のケアに取り組みたい」と心理カウンセリングを学ぶことにしたのです。土田さんは、20年前から心理カウンセラーを養成する講座を開いていて、伸子さんの兄・西澤さんも教え子の一人でした。

(土田さん)「熱心ですよ、すごく質問もしてくださいますし、人間観察といいますか。そういう観察力と洞察力と言う事は(西澤)先生もそういえばそうだったなぁと」

一方で伸子さんは元患者らと接する中でずっと抱えていた思いがありました。

(伸子さん)「素人の私が患者さんに寄り添うことってしていいのかとか、やれるのかなっていうところが」

 (土田さん)「西澤先生の妹さんとしてそこにいらっしゃるだけで皆さん救われると思いますよ。自分たちの中に入ってくれたっていうだけで、それが誠意というか患者さんも救われていると思う」