「僕の人生はまだ終わっていない」

狩俣さんがこうした経験を赤裸々に語った講演会には、多くの失語症の当事者やその家族、支援者などが、耳を傾けた。
狩俣倫太郎さん:
「(復帰して)初めて東京に行って、1人で飛行機に乗ったり。何でもないこととみんな思うけど、本当に大変だったんですよ。会議に参加したけど、5割は分からなかったり」
すべてが完璧になったわけではない。
今も課題は残る。会議で説明を求められると、順序立てて話すことが難しい。それでも、狩俣さんは前を向いている。
「人生、本当にまだまだです。僕の人生はね、まだ終わっていないんですよ。今も前に進んでいます。そう。だからね、まだまだですよ。新しいことに挑戦するんですよ」

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「失語症は、道のりが長い。常に道の途中にある」
言語聴覚士の松田さんのこんな言葉が筆者の印象に残っている。狩俣さんと同じように失語症に苦しむ人々と、その家族に向けたものだ。
松田真梨子さん:
「同じようにご家族も長い道のりを共に歩みます。感情や知性が失われたわけではなくて、言葉が制限されているだけですが、『こんな簡単なことも伝えられないのか』とイライラしたり、落ち込んだり、情けなく思ったりと、内側に感情を溜め込みやすく、とても孤独を感じやすいんです」
「全国には約50万人の失語症者がいるとされます。しかし、元の職場に復帰できるのはわずか1割という厳しい現実がある。だからこそ失語症者は切実に社会的支援を必要としているんです」
狩俣さんは、1割に入る努力を重ねたかもしれない。だが同時に、9割の人々を取り残さない、社会全体の理解が不可欠だ。当事者が声を上げることが困難な障害だからこそ。(取材 久田友也)
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【第2話】リハビリを「楽しんだ」 笑う陰で努力














