ハリウッド映画への思い入れに世代間ギャップ
日本で言うと、私のような中高年と、若い世代の間ではハリウッド映画への思い入れに大きな違いがあるように思う。それは、私たちが幼い頃からハリウッド映画に囲まれて育ったからだ。
1960年代生まれの私は、その典型だ。昭和一桁世代の両親は、戦後にドッと入ってきたハリウッド映画に魅惑され、子どもの頃の私は、その話をこってり聞かされた。テレビでは〇〇洋画劇場や△曜ロードショーなどで毎日ハリウッド映画を、両親による解説付きで見た。
しかも放送コードが今よりずっと緩い。「俺たちに明日はない」のラストの蜂の巣銃撃シーンも、マリリン・モンローのスカート丸めくりシーンも、「猿の惑星」シリーズの最後で地球が爆発する悲惨なシーンも全部見た。
ハンフリー・ボガートにハードボイルドの渋さを教わり、チャップリンにスラップスティックの原点を刷り込まれ、007シリーズでスパイアクションの全てを体験した。幼い頃にテレビでハリウッド教育を受けた後、10代になると映画館でますます感化された。
中学時代に「スターウォーズ」と「ジョーズ」の洗礼を受け、以降はジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグが大作主義でハリウッドを再興する時代を共に歩んだ。
ブルース・ウィリスかアーノルド・シュワルツェネッガーが主演ならアクション映画は間違いなかったし、トム・ハンクスが出るコメディなら絶対笑えた。
私たちの世代は、そんな風にハリウッド映画と共に生きてきた。だが日本の映画界は2000年代以降どんどん、日本映画の方が観客を呼ぶようになっていった。その牽引役がテレビドラマの映画化とアニメ映画だった。
2010年代に入るとドラマの映画化は勢いを失ったが、アニメ映画はその魅力を高めていった。今の若い世代は、アニメ全体が面白くなるのと共に歩んでいる。幼い頃はジブリアニメで育ち、テレビでは深夜帯に、成長した彼らにも見応えある大人向けのアニメ作品が放送されるようになった。
私たちがテレビでハリウッド映画を吸収したように、若い世代はテレビでアニメ文化を吸収してきたのだ。それが細田守や新海誠、そして最近は「鬼滅の刃」「チェンソーマン」などが映画館で大きく花を開かせている。
そうやって振り返ると、ハリウッド映画に染まった私たちの世代がおかしかったのではないかとも思う。そして、似た傾向が今、世界で起きている可能性がある。日本はアニメが強いおかげで先行しているのだ。
だからハリウッド映画が映画館で勢いを失っているのは当然の帰結。「ワン・バトル・アフター・アナザー」が8位に登場してすぐ消えたのは仕方ない。ディカプリオが「タイタニック」で女性たちをうっとりさせたのはもう28年前だ。いまはただのおじさん俳優。若者たちは興味なんてない。














