和佳子さんからもらったネクタイ
娘の死後、八島さんは命とは何かを深く考えるようになりました。そんな時、以前上司に教えられた「孝経」という儒教の書物の、ある一節が強烈に頭に浮かびました。

「身体髪膚(しんたいはっぷ)これを父母に受く。あえて毀傷(きしょう)せざるは孝(こう)の始めなり」
私たちの体は父母から授けられたものだから、それを傷つけないようにしなければならない。元気に生きていること――それが親孝行の始めだという教えです。当時の八島さんにとって、痛いほど分かる一節でした。
八島定敏さん:
「娘からこのネクタイをプレゼントしてもらった。これは嬉しい。親孝行でくれたんだと思う。でも本人がいなくなったんでは…何も嬉しくもなんともない」
この日八島さんは、50歳の誕生日に和佳子さんからプレゼントされたネクタイを締めて講演に臨んでいました。

どんな形であれ、子どもを亡くすことが、親にとってどんなに辛いことか。八島さんは生徒に優しく訴えます。
八島定敏さん:
「絶対に皆さんは、ご両親より先に死ぬなんてことは絶対にないようにしてください。本当にこれだけはお願いしたい。20年経っても本当に辛いです」














