今月18日、高市政権の安全保障政策を担う「総理官邸の幹部」が、記者団との非公式な懇談の場で「日本は核を保有すべきだと思っている」と発言しました。個人的な見解としながらも、国是である非核三原則を真っ向から否定する内容が報じられたことで、自民党内からも非難の声が上がり、中国や北朝鮮に加えてアメリカも反応するなど大きな波紋を広げています。
政府は「非核三原則を政策上の方針として堅持している」として火消しに走っていますが、唯一の戦争被爆国であり、核不拡散を訴えてきた日本の信頼が揺らぐ事態となっています。
一方、この問題をめぐっては国民民主党の玉木代表が自身のXで「オフレコの話を記事にするメディアも問題」と投稿。SNS上でも同調する声が上がる一方で、こうした発言を報じないことは国民の「知る権利」に反するとの指摘も出ています。核保有をめぐる議論と同時に、政治報道におけるオフレコの取扱い線引きについても議論が巻き起こっています。
そこで、共同通信・編集委員の太田昌克さんと、TBSラジオ国会担当の澤田大樹記者とともに、この問題を議論しました。
(TBSラジオ『荻上チキ・Session』2025年12月22日放送「政府高官の『核保有』発言から考える~オフレコ取材、核をめぐる議論の行方」より。構成:菅谷優駿)
オフレコとは何か?報道現場の複雑なルール
TBSラジオ国会担当の澤田大樹記者によると、オフレコ(オフ・ザ・レコード)とは「記録に残さない」という意味で、カメラや録音機の前での発言ではないことを指します。ただし、日本と海外ではオフレコの定義が異なっていることが背景にあります。
「日本の場合、『官邸筋』や『官邸幹部』といった言い換えをした上で報じることがあります。これを日本ではオフレコ取材と呼びます。一方、海外でオフレコというと、何を話したか、誰が話したかということ自体も報じてはいけないという約束事になっています(※日本では「完全オフレコ、完オフなどと称する)」と澤田記者は説明します。
今回の報道に関して、各報道機関の言い方も異なっています。TBS、日本テレビ、NHK、読売新聞、朝日新聞などは「官邸幹部」と表現し、共同通信、日経新聞、西日本新聞などは「官邸筋」、テレビ朝日は「官邸関係者」、時事通信は「政府高官」と報じています。
「日本のルールに従うならば、今回の報道で『誰が話したか』は一切出ていないはずです。つまりオフレコ破りではないはず」と澤田記者。














