エコシステムを停滞させないために必要なこと

野村:お話を伺っていると、IPOも厳しい、M&Aも調整がつかないとなると、スタートアップはどうなってしまうのでしょうか。

村上:結果として、消去法的に「もう少し粘ろう」という選択にならざるを得ません。幸い、市場には待機資金(ドライパウダー)があるので、資金を繋いで成長を目指すことは可能です。しかし、出口が詰まったまま会社だけが溜まっていく状況は、エコシステム全体の新陳代謝として不健全です。

野村:今後、この状況を打破するためには何が必要だとお考えですか。

村上:根本的な契約ルールやガバナンス構造の見直しが必要です。「お互いやりたいけれどできない」という不幸な状態を避けるために、初期の投資家の拒否権を段階的に解消する、あるいはM&Aの決定権を集約するといった設計を、最初から組み込んでいく必要があります。

スタートアップが社会に統合され、次のサイクルを生み出すためにも、この「出口戦略のデッドロック」を解消することは非常に重要な課題だと感じています。

<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。