今年6月に施行された改正刑法で、従来の「懲役刑」「禁錮刑」が廃止され、新たに「拘禁刑」が新設。これにより、刑務所は「刑罰を与える場所」から「受刑者の立ち直り」を目指す場所へと変わりつつあります。

 高齢受刑者への“脳トレ”指導や、発達障がいのある受刑者に配慮した“ぬいぐるみ部屋”など、新たな取り組みもスタート。受刑者更生支援のあり方の変化は、刑務官ら職員の意識も変えつつあると言います。

 刑法改正により“塀の向こう側”では何が起こっているのか?堺市にある大阪刑務所を密着取材しました。

「計算ドリル」「間違い探し」作業療法士が“脳トレ”指導

 堺市にある大阪刑務所では、出所後5年以内に再び罪を犯した受刑者や暴力団関係者の受刑者など、犯罪傾向が進んでいる約1200人が収容されています。

 刑務所の1日が始まるのは午前6時40分。受刑者は許された時間以外の私語は禁じられていて、規律が保たれているか、逃亡の恐れがないか、刑務官が常に目を光らせています。

 しかし、そんな厳しい刑務所生活が、受刑者の更生支援を重視する「拘禁刑」の新設で変わりつつあります。

 午前7時半、受刑者は企業から請け負った日用品の組み立て作業を始めました。従来から行われている刑務作業です。

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 そんな中、女性職員が数人の受刑者に声を掛け、部屋の一角に集めました。高齢の受刑者です。

 (作業療法士の職員)「みなさんおはようございます。きょうも始めていきます。慌てずに進めていきましょう」

 始まったのは、2桁までの足し算や引き算などの計算ドリルや、間違い探し。高齢受刑者向けの「脳トレ」です。作業療法士の資格を持つ職員の指導のもと、認知機能や運動機能の向上を目指す訓練に真剣に取り組んでいます。拘禁刑とともに始まった新たな支援の1つです。

 (大阪刑務所矯正処遇部 谷川博昭次席)「最初は受け身。『なぜやらされているのか』という人もいたが、やっていくうちに『できなかったことができた』と。そういう変化があると感じています」

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 今回、万引きで服役している80代の男性受刑者は…

 (80代の男性受刑者)「(Q刑務所は何回目ですか?)2回目。(Q運動する時間や書き物する時間はどうですか?)ええと思います。先生が教えてくれたので、やっと仕事ができるようになりました」