先行きにコメ価格急落懸念も
コメ価格は、足もとでは高値が続いていますが、実は、先行きについては、価格急落を心配する声が相次いでいます。今や、店頭で5キロ5000円以上する新米の売れ行きがさっぱりで、在庫が積み上がっている状態です。
新米の売り文句が通じなくなる年明けから価格が下がるという見方もありますし、「来春には価格暴落の恐れ」と公言する大手販売業者もいます。
農水官僚出身の鈴木大臣には、コメのだぶつきが見えていて、そこへの危機感があるのかもしれません。鈴木大臣は、そうした意図や特定団体への利益誘導については、一貫して否定していますが、おこめ券が9月までという期限で配られれば、その分、来年の需要を支え、価格下落を一定、とどめる効果が期待できることは確かでしょう。
180度転換したコメ政策
高市政権が誕生し、農水大臣が小泉氏から鈴木氏に代わって、コメ政策は180度転換した感があります。小泉前大臣が「コメ価格の引き下げ」を明確に目指していたのに対し、鈴木農水大臣は、「価格はマーケット(市場)で決まるべき」と繰り返し、事実上、現在のコメ価格の高騰を是認しています。コメ増産の方針も撤回しました。
しかし、物価高対策の本来の目的は、物価を少しでもさげることです。おこめ券を配るより、コメ価格を下げることの方が重要なはずです。主食価格が1年で倍以上になったのに、価格は市場に委ねるなんて、担当大臣が言っている国など、普通ありません。
そもそも「価格は市場に任せるべき」などという建前論は、コメ市場が「とても市場とはいえない」ものだという前提、基本認識を無視した発言です。圧倒的な力を持つ生産者団体の存在や事実上の減反という国の政策介入によって、「市場機能が働かない不完全な市場」ができたからこそ、多くの問題が生じているのではないのでしょうか。
おこめ券をめぐる一連の出来事は、消費者不在の農政を改めて浮き彫りにすると共に、改革と強い経済を標榜する高市政権の足を引っ張る、思わぬ「失点」にも、なりかねません。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














