交通網の整備こそが1丁目1番地

『日本列島改造論』は、そういう角栄氏による改革論の集大成です。
その柱となったのが、交通・通信インフラの大胆な拡充でした。
新幹線と高速道路を全国に網の目のように整備し、産業や人口の分散を促そうとしたのです。

『日本列島改造論』は発売年に91万部を売り上げ、ベストセラーの年間第4位となりました。

東京一極集中を緩和し、太平洋ベルト地帯に偏った経済構造を改める狙いがありました。特に当時として新しい視点だったのは、日本海側を「第二の経済軸」として育てようとした点です。日本海沿岸に高速道路や港湾を整備し、物流や産業を呼び込むことで、地域格差の解消を図りました。

都市と地方の格差をなくす

さらに角栄は「定住圏構想」を掲げました。

これは、どこに住んでも都市部と同等の生活水準を享受できる社会を目指すもので、道路、鉄道、港湾、上下水道、通信網といった基盤整備を全国的に進め、医療や教育、福祉などの社会資本も集中的に整えるという考え方です。
地方の生活の質を底上げし、住民が大都市へ流出しなくても豊かに暮らせる環境をつくることが狙いでした。

東京の労働者たちのかなりの部分は「田舎から出稼ぎにやってきたお父ちゃん」たちでした。