■「アナウンサーを辞めることも考えた…」 発信する側として前を向くきっかけ作りを

小川彩佳キャスター:
自身も発声障がいを抱えている、愛媛あいテレビの山田祐也アナウンサーにお話を伺います。
山田さんは、どんなときにどんな症状が出るんでしょうか?
山田祐也 itvアナウンサー:
主にナレーションのブースで原稿を読もうとしたときや、生放送のスタジオでニュース原稿を読もうとしたときに症状が現れます。『か行』と『た行』が頭にくる言葉が特に出づらくなっています。
小川キャスター:
声を生業にする職業でもありますから、多くの仕事への影響もあったんじゃないですか?

山田アナウンサー:
アナウンサーでいること自体が非常につらい時期がありました。特にナレーションを読むときは、6分程度のナレーションを読むのに4時間から5時間かかって、本当にその度に自分を責めてしまって、そういったことがやっぱりつらかったですね。
国山ハセンキャスター:
自分を責めたという言葉がありましたけども、アナウンサーを辞めた方がいいんじゃないかとかそういう思いに至ったこともあったんですか?

山田アナウンサー:
もちろんアナウンサーという職業を辞めることも考えました。ただ病気についていろいろ調べているうちに、同じように声に悩んでいる人たちが大勢いることを知って、発信する側の私がここで後ろ向きになっていては駄目だなという気持ちにさせてもらいました。なので、同じように悩む人が前を向くきっかけを作れればいいなと思って今回取材を進めました。
国山キャスター:
仕事を続ける上で、会社や周囲の理解が欠かせないんじゃないかなというふうに感じますが、発声障がいを打ち明けたとき、職場の反応はどういった反応でしたか?

山田アナウンサー:
やはり職場の皆さん最初はすごく驚いていて、私自身が普段ニュースを読んでいる中での発声障がいということに非常に驚いていました。ただ、すぐに協力的にいろんな言葉をかけてくれて、「気にしなくていいよ」「大丈夫だよ」という言葉に救われました。今は症状が出そうだなと思うような原稿はあらかじめわかるので、そういったときはパートナーのアナウンサーに読むのを代わってもらうなどしています。
小川キャスター:
そういったサポート体制や、周囲がどういう佇まいで向き合ってくれるのかということも非常に大事なところなのかなと思います。ご自身の経験の中で周りの方々には、どんなふうに向き合ってほしい、どんな佇まいでいてほしいとお考えですか。

山田アナウンサー:
何か特別なことをしてもらわなくてもいいと私自身は思っています。発声障がいの当事者の方もおっしゃっていたんですけれども、「サポートするよりかは知ってほしい」というところが一番ですね。これは発声障がいにとどまらず、いろんな病気や障がいに当てはまることだと思うんですけれども、自分にとっては当たり前にできることでも、それをできない人がいる、しづらい人がいるっていうことを皆さんが知ってくれているだけで、その当事者の皆さんは、少し前を向くことができるのではないかなと取材を通して感じました。