■“サポートより知ってほしい” 症状は人それぞれ

山田アナウンサーが「発声障がい」の取材で出会った、市川涼子さん(38)。
市川さんが打ち合わせに指定したのは、松山市内にあるカフェでした。

市川さん
「注文がタブレットでできて、店員さんと話さなくていいところが気に入っています」

市川さんは10年前、喉の筋肉が痙攣して声がかすれたり、出づらくなったりする「痙攣性発声障がい」と診断されました。

勤務先でレジ打ちをする市川さん
「1055円お預かり致します」


「大丈夫ですか?声」

発声障がいの症状は、人それぞれ。
市川さんの場合、症状が現れるときと、そうでないときがあり、大きな声も出づらいといいます。

市川さん
「レジのときだけ出なかったので理解は全然されなかったですし、『声出てるやん』って言われることもよくありました。周りの人とのコミュニケーションがなかなかとれないことも、すごくつらい」

高知大学の調査によると、痙攣性発声障がいの患者は全国に7000人前後いると推計されています。しかし実際には、より多くの人が悩んでいると考えられていて、「発声障がい」全体の患者数は分かっていません。

2022年11月、発声障がいの患者交流会に参加した市川さん。

交流会の参加者
「ある日突然、急に皆さんと同じように声が出しづらくなって」
「この声で伝わる?」

声が出ないときには筆談も行いながら、日常の出来事や悩みを共有します。

交流会の参加者
「口の動きで分からせようとするのが(マスクで)今できない」

SDCP発声障害患者会 田中美穂代表
「コロナ禍で発声障がいの人、ほとんどが苦しんでいるんじゃないかな」

根本的な治療法はありませんが、症状を和らげる効果が期待されているのが声帯の筋肉の緊張をほぐす、ボトックス注射。
市川さんも打ちました。

症状を和らげる注射には2018年に保険が適用されましたが、それでも自己負担額は1万円から2万円程度。3か月に一度注射を打つ患者が多く、経済的な負担が強いられます。

山田アナウンサー
「発声障がいという病気に対して、社会的にどんなサポートがあったら嬉しいと思いますか?」

交流会の参加者
「そっとしておいてほしい。みんなが(発声障がいを)分かっていたら、そのまま流してほしい」
「詰まったり震えたりするんだけれども、声自体は出ないわけではない。(声が)中途半端に出ちゃうところが難しい」

市川さん
「サポートしてほしいというよりかは、知ってほしい」

インタビューの途中で市川さんは、山田アナウンサーにこう呟きました。

市川さん
「話すことを避けるのをなるべくやめたいなって最近思っています。発声障がいがあっても接客をしてもいいし、そういうアナウンサーがいてもいいと思いますし、『発声障がいがあるからできない』というのはなくなったらいいですよね」