優優の血が繋いだ朱鷺色の空

友友と洋洋のペアは相性がよかったのでしょう。彼らが日本に来てからわずか4か月後の1999年5月、佐渡トキ保護センターで生まれたのが、日本での人工繁殖第一号の優優でした。
優優の誕生を皮切りに、佐渡ではトキの数を増やし、自然界にトキを放す放鳥も進めました。その結果、現在は600羽近くが野生で暮らしています。優優自身もその後親鳥になり、なんと68羽もの子が巣立っています。佐渡の大空には、朱鷺色(ときいろ)といわれる淡い桃色の羽を広げて舞う、トキの姿が復活したのです。
国境を越える「生命(いのち)の伝承」
トキを日本に贈った中国側にも、対日関係をよくしたいという思惑はもちろんあったでしょう。しかし、トキは中国にしか生息しないパンダと違い、明治時代までは東アジア一帯に広く分布していました。このエリア全体の宝物なのです。国境を越えて、みんなで守り、世代をつなげることができるはずです。
優優の両親は中国から日本にやってきましたが、優優はその両親から日本で生まれ、優優の子孫も日本で生まれ、日本の空を今も舞っています。ルーツが中国のトキの舞う大空には、「日本だ」「中国だ」なんて、狭い感情は存在しません。相手を非難・蔑視するだけでは、なんら生産的なものは生まれません。
日中関係が冷え込む今、日本と中国をつないだ、トキの優優という存在が教えてくれるように、私たちが学ぶことは少なくないように思います。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。














