日中協力の象徴、トキ「優優」の死

そんな中、先週接したあるニュースから、日中関係について少し視点を変えて考えたいと思います。

「新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターで飼育していたオスのトキ、優優(ユウユウ)が11月24日に死にました。優優は中国から贈られたオスの友友(ヨウヨウ)とメスの洋洋(ヤンヤン)の間に生まれ、26歳でした。優優は日本で初めて、人工繁殖によって誕生した一羽でした」

トキは国の特別天然記念物ですが、一時は絶滅の危機にありました。この危機を日中が協力して脱する最初の第一歩が、この優優でした。優優は、まさに日中協力の象徴と言えます。日中関係がまさに「こんな時だからこそ」、この一羽のトキが遺した意義を考えたいのです。

江沢民主席からの贈り物

話は27年前に遡ります。1998年11月、中国の国家元首として初めて江沢民国家主席が日本を訪問しました。江主席は、天皇陛下(現在の上皇さま)との会見の席上、中国から日本へトキのつがいを贈呈すると表明しました。それが、当時2歳だった友友と洋洋のカップル、すなわち優優の両親です。

当時、江沢民主席は天皇陛下との会見や宮中晩餐会などで日中間の過去の歴史に繰り返し言及し、日本側に反省を強く要求したため、日本国内では大きな反発を招きました。しかし、この政治的なやり取りの後に、翌1999年1月、オスの友友とメスの洋洋のペアが日本へやってきたのです。

当時の日本は人工繁殖が一度も成功しておらず、2003年に最後の日本産トキが死に、国産トキは絶滅していました。この友友と洋洋が日本に来なければ、日本からトキは消えていたわけです。