「死者の国」の装飾を読み解く

外気を遮断するためのガラス戸の向こうには、朱色で彩られた神秘的な世界が広がっていました。

玉名市教育委員会 宇田員将さん「丸は鏡を模したものだと言われています。三角も『辟邪(へきじゃ)』と言われていて、死者に対して悪いものが寄ってこないようにという願いが込められている」

さらに死者を黄泉の世界へ運ぶ「舟」とみられる文様もあり、当時の信仰や思想が垣間見えます。

全国で唯一、装飾古墳の研究をしている熊本県立装飾古墳館の矢野学芸員は「装飾古墳は古代の人の死生観や死者への思いが詰まった熊本発祥の文化」と、古墳の復旧保存の意義を強調します。

熊本県立装飾古墳館 矢野裕介さん「先人が残してきた財産だと思っています。全国一の数を誇る装飾古墳ですし、熊本県民の1つのアイデンティティを構成する要素であると。それは大事にしていかなければいけない」

しかし、古墳の復旧工事は、まだ時間がかかるようです。

理由として、矢野さんは「市民生活の復旧を優先すると、文化財の復旧はどうしても遅れてしまうこと」、「地震による古墳の復旧は全国にも先例が少なく、復旧方法の検討に時間がかかること」を挙げました。