若き日の思いを役者として表現する

ドラマ『フェイクマミー』より

“パイオニア”として、今後挑戦したい役柄を尋ねると、筒井さんは笑顔で力強く宣言してくれた。

「“これ、女性がやるか?”と思われるような役をやりたいです。でも、それがまったく不思議に見えないように演じたい。いまは女性が総理大臣になった時代ですからね」。

学生時代を過ごした40年以上前、女性は社会の中で多くの制約を受けていたという。

「当時、女性でも“バンカラ(明治〜昭和初期の学生文化で硬派な精神を指す。言動や身なりが粗野なのが特徴)”気質の人が多い大学に通っていたんです。使い古した雪駄を履いたような女子大生が学生運動で配るために“ガリ版(謄写版の愛称で、ロウを塗った原紙をヤスリ盤の上に置き、鉄筆で文字や絵を刻んで作る簡易的な印刷機)”でビラを刷っていたりして。その人たちは当時の男女格差や社会の圧力さえなければ、バリバリ働くような社会派の記者になっていたかもしれない。でも社会に出た途端、お茶くみをしたり、“女のくせに”と言われたりした、そんな時代でした」。

筒井さんはその思いを役者としての信念に重ねる。

「本当は私と同世代でもバリバリ仕事ができる女性は潜在的にたくさんいる。その人たちの代弁者になりたい。あの時の社会構造につぶされなかったらこうなったはず、というリアルを伝えられたら」。

自身の役者としての心境にも触れる。

「自分でも“社会派っぽい役者なのかも”と感じるところがあります。本当はそういう役柄のほうが似合うのに、細面だからか若い頃はかわいらしい役をやったりしていました。今はようやく自分らしく生きられている気がします」。