難しい母親役にも臆せず向き合う姿勢

ドラマ『フェイクマミー』より

筒井さんは、自身が母親ではない立場からも丁寧に役と向き合っている。「姉や友人など、子どもを育てている方たちにじっくり話を聞くようにしています。お母さんと子どもの関係って本当にそれぞれ違う。母親という存在を理解するために、できる限りいろいろな境遇の方から話を伺うようにしています」と語る。

さらに、「母親役を演じる機会が増える中で、相手役の娘や息子といった子どもたちのキャラクターのバックグラウンドが自然と豊かに膨らんでいくように心がけています」と続ける。

“母親役”であっても、“人間を演じる”という根本は変わらない。

「役柄に似ている方がいたら、分からない気持ちをそのままにせず、すぐ聞くことにしているんです。役作りの方法はどんな役でも同じですね」。

過去には、ドメスティックバイオレンス(DV)を行う母親という難しい役にも挑戦した。

「その時は心理学の本を読んだり、専門の先生にお話を聞いたりしました。そういう行為の根っこには、愛情の欠如や、かつて自分も被害を受けた経験が要因の一つだと仰っていました。そうした背景を理解しないままセリフを言うだけでは、ただの上滑りな“演技”になってしまう。だから私は必ず掘り下げるんです」と真摯に語る。

「ただ、見ている方に“頑張っている感”は伝わらないほうがいいと思うんです。何事もなく自然に見えることが一番。苦労が見えたら興ざめしてしまいますからね」。その言葉に、長年積み重ねてきた品格がにじんでいた。