「社会の厳しさに耐えうる大人になってほしい」
2日間の練習を終え、最後には球児たちにイチローさんからメッセージが贈られた。野球人である前に、人として大事にすべきことを球児たちに伝えたイチローさん。1日目の打撃練習で自身のアッシュのバットを手渡した高校通算24本のスラッガー・牟禮翔選手(むれ しょう、2年)には、バットをプレゼント。自身の経験をもとにプロを目指す上での心構えを説いた。
イチロー:迎える選抜大会は当然優勝候補筆頭になるわけね。そのときにみんな、九国を目指して倒すっていうモチベーションでやってくる。それはかなり大変なこと。今回2日間やった練習を僕は生かして欲しいと思ってる。僕にとってはかわいい後輩のような存在に既になっている。
野球で結果を残す。甲子園に出て結果を残す。もちろんなんだけれども、みんながその後、大学に進学したり社会人になったり、プロに行ったり、そのときに、社会の厳しさに耐えうる大人になってほしい、立派な大人になって欲しい。そっちの方がもっと強いということも知っておいてほしい。それがすごく大事なことなのね。
牟禮くん、アッシュはどうぞ使ってください。感触がなかなか味わえないので折れるまで、それはどうぞ使ってください。明確にプロを目指してるでしょ。もう目指すというより、入ることを前提として、取り組んでください。
僕の高校時代はね、プロに入るかどうかわからないドラフト4位の選手だったんで、そんな余裕はもちろんなかったんだけど、それでもプロに入ってから、高卒だったらここまでに結果を残してレギュラーを取る、というプランは明確にあった。高校時代もそうやって僕は過ごした。プロに入ってからの事を考えて、そういうプランがすごく大事なんでプロに入ることを前提として生活して欲しい。
みんなと勝利を分かち合う、甲子園を目指す、トップを目指す。それがあってこそなんだけれども、それとは別次元の話として、個人的にそこは当然のこととして、組み立てていってほしい。それができたらプロに入った時点で同い年の選手たちとはもう大きな差がついてるはずなんで。そこをイメージしてください。
みんなすごく個性があってね。面白いチームだなと思った。今はなかなか個性を見出しづらい流れ、世の中になっている中、この個性は素晴らしいなと思ったね。僕も個性の塊です。プロ野球選手の中、個性が多い中、割とその中でも強い。そうやってなかなか貫くのは大変なんだけれども、やっぱり人との違いがあった方が、それは面白いし、見てる人も面白いしね。
みんなの個性を大事に。それは当たり前にあるものではないので、個性と能力ね。なんか時代の流れとかさ、トレンドとかってあるじゃん。それに乗っかってるとなんか楽な感じあるよね多数派になるからさ。ある程度その多数派っていうのは、今ある世の中の流れの正解みたいなことでしょう、多数派だから。それは認めるんだけれども、自分はこうありたいっていうのをしっかりと持っておくのが大人だと僕は思うので。ぜひみんな、今回、大切な言葉として心に留めておいてください。みんなの個性はやっぱり特別なものなので絶対にそんなトレンドとか、左右されて欲しくない。
◆イチローさんの高校野球指導
今年で6年目を迎えるこの取り組みは2020年の智弁和歌山から始まり、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳(千葉)、高松商(香川)、22年に新宿(東京)、富士(静岡)、23年の旭川東(北海道)、宮古(沖縄)、24年の大冠(大阪)、岐阜(岐阜)、今年は中越(新潟)と通算12校目。
◆九州国際大付
夏の甲子園に10度出場、最高は2015年の準々決勝進出、その時は清宮幸太郎(現日本ハム)擁する早稲田実業に敗れた。センバツは3度出場、2011年にはのちにDeNAに入団する高城俊人を擁し決勝まで進んだが、東海大相模に敗れた。今年の夏は決勝まで進んだが西日本短大付属に敗れ、甲子園出場とはならず、新チームになり、秋の大会では4年ぶりに九州王者となり、先日19日に行われた神宮大会では初優勝を飾った。

















