当時生後5か月の次男の頭部に暴行を加え意識不明の重体にさせたとして、傷害容疑で逮捕されたものの、不起訴となった男性(29)について、検察審査会が「不起訴不当」を議決しました。

 検審は議決書で「当初の供述内容を再検証するなどし、矛盾点について追及するなど捜査を尽くすべき」「真相の解明及び社会正義の実現を果たすべく、丁寧な捜査を行っていただきたい」としています。

◆息子2人への暴行で有罪判決も…次男への「傷害」容疑は「不起訴」次男は意識戻らず死亡

 2023年9月の大阪地裁判決によると、29歳男性は当時住んでいた大阪府泉大津市の自宅で、▽2019年12月から2020年2月にかけ、当時0歳の次男に対し、体を左手で持ち上げて放り投げベット上に落としたり、左ひじを噛むなどの暴行を加えたほか、▽2021年12月、当時生後5か月の次男に額を噛む暴行を加えました。

 同地裁はこの男性に、暴行と暴力行為等処罰法違反の罪で懲役2年・執行猶予5年の有罪判決を下し、男性側・検察側の双方が控訴せず、判決は確定しました。

 この男性は、2021年12月に次男に頭部にも強い暴行を加え急性硬膜下血腫などの重傷を負わせた疑いでも逮捕・送検されていましたが、大阪地検はこの傷害容疑については「捜査を尽くしたが起訴に足るまでの事実を認定できなかった」として不起訴としました。

 しかし、次男は意識を回復しないまま、その後死亡しています。

 この不起訴について、申し立てを受けた大阪第三検察審査会が審査していました。

◆検察審査会は「供述内容が著しく変遷。真実を隠そうとする意図すら感じられる」と指摘

 同検察審査会は、

▽病気などの内因性や事故の可能性が完全には否定されないとの指摘もあるが、事件発生時の状況を鑑みると、被害者は何者かに外力を加えられたことによって傷害を負ったと考えるのが相当

▽男性以外に犯行可能な者がいないと思われ、供述内容が著しく変遷しているうえ、変遷させたタイミングも不自然。真実を隠そうとする意図すら感じられる。自らの犯行を隠蔽しようとしたのではないかとの疑いを持たざるをえない

と指摘。

▽当初の供述内容を再検証して、改めて客観的事実と整合するか確認し、矛盾点について追及するなど捜査を尽くすべき」
▽幼い子が長期の療養を強いられた末に意識を取り戻すことなく死亡するという痛ましい結果となっており、本人の無念や親族の悲しみは計り知れない。検察官には被害者及び親族の心情に寄り添い、真相の解明及び社会正義の実現を果たすべく、丁寧な捜査を行っていただきたい

として、10月14日付けで「不起訴不当」を議決しました。

 この議決により、大阪地検は再度捜査を行い、改めて起訴・不起訴の判断をすることになります。