戦争の体験者から直接話を聞く機会が減る中、戦争の悲惨さを落語で伝え続けることに取り組んでいる噺家がいます。滑稽な落語で悲劇を語る狙いとは。
落語家 三代目 桂花團治さん
「あれゾウのハナか!あんな汚い花、一輪挿しにはよう挿さん。何言うてんねん、その花と違う」
大阪の落語家・三代目桂花團治さん(63)。落語で戦争体験を伝える「伝戦落語」の新作を先月、披露しました。これで4作目です。
始めたきっかけは、空襲で亡くなった先代への思いからでした。コロナ禍にあった2020年、講演が次々と中止になり、花團治さんも高座に上がれない日が続きました。
落語家 三代目 桂花團治さん
「ここで稽古していると、二代目花團治と目が合うんですよね。『わしなんかは、これからやいうときに襲名して1年足らずで空襲で死んでもうたんや』って。僕が先代の無念を伝えていくべきちゃうかなって、落語を通じて」
今回の落語の題材は、太平洋戦争中に名古屋市の東山動物園で起きた話。空襲で壊れたおりから逃げるかもしれないなどの理由で、猛獣が次々と殺処分されていったことが生々しく語られます。
落語家 三代目 桂花團治さん
「どうせ殺されるんやったら、俺の手にかかったほうがええっちゅうのか。そう思ってええねんな。ええねんな」
客
「語り部とは違う。会話の駆け引きが臨場感につながるのかな」
この動物園では、ゾウはなんとか助けることができました。戦後、全国の子どもたちが名古屋でゾウを見ることができるよう、国鉄が走らせた「ゾウ列車」は歌になりました。この歌が創作の意欲をかき立てたといいます。落語の発表に先立ち、花團治さんは題材になった歌の作曲家を訪ねていました。
音楽家 藤村記一郎さん
「(ゾウ列車の歌は)つらいことだけを合唱にするのではなく、『(子どもの)ゾウに会いたい、ゾウと遊びたい』という夢を実現させる物語」
落語家 三代目 桂花團治さん
「僕の『伝戦落語』も合唱曲みたいに希望で終わる。しっかりと戦争のことを描きながら、最後は希望が見える」
戦争のことを伝えるために悲しい話ばかりではつらい。そこに落語の出番がありました。
落語家 三代目 桂花團治さん
「戦争の落語ですから、ぐっと張り詰めた場面って多々ある。緊張する場面。だから余計に笑いの場面って要ると思う」
「伝戦落語」の創作はこれからも続きます。
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