「閉鎖病棟じゃから その鍵に対して従順になっとるだけで」

山本さんは岡山大学医学部出身です。精神科医としての原点は、三十代半ばの三年間を過ごした広島県尾道市にあります。

手におえない患者を鎮めるためであれば電気ショックなどの手荒な措置も容認されていた時代。

しかし、山本さんの前では患者たちは従順で、良好な関係が築けているものと、山本さんは思っていました。ところが・・・

(山本さん)
「僕が回診しようりましたらね、ある患者さんが立ってね、僕をバーンと殴ったんですわ。『ええかげんにせえ』言うてから殴られて。『お前が鍵を持っとるからね、閉鎖病棟じゃから。その鍵に対して従順になっとるだけで。(お前には)何もありゃせんのじゃ!』と言ってね、僕に忠告してくれたんです」

衝撃を受けた山本さんは、患者にある提案をしました。病棟から鍵を取り払う。ただし問題行動が起きたら、また鍵をかける。一年間、守り続けることが出来たら病棟を完全に開放しよう。これに職員が反発しました。