■「言葉」の詰まったタブレット「想像力は優しさ」

須江監督がいつも持ち歩いているものがある。タブレットだ。選手たちの特性や克服すべき課題、そして、練習に取り組むべき姿勢。監督となって接してきた選手たち一人一人に投げかけてきた言葉の全てが、記録されているという。

須江監督が、いつも選手たちに投げかける言葉がある。

「野球を通じて、多くのことを学ぶ姿勢を持ってほしい」。新入生に語りかける言葉だ。

「彼らは多くの自由があるなかで、高校野球を選んだ。この高校3年間、何だってできる。音楽だって、好きな女の子と遊ぶことだって、アルバイトでためたお金で海外に行くこともできる。そんな自由な世界があるのに、野球しか上手くならないのは、薄っぺらすぎる。野球を通して、多くのことを学ぶ姿勢がなければダメだよと話しています」

「高校3年間を通じて、人として成長してほしい」という思いが込められている。

そして、「想像力は優しさ」という言葉。

「自分が成長するためには、他者の成長がとても大事。自分一人ではうまくなることもできないし、公平な競争で切磋琢磨していかなければ技術って伸びない。お互いのことを思って、補完し合うような関係でないといけない。仲間のモチベーションが低いときに、親とうまくいっていないとか、友達とうまくいっていないとか、その背景に色々と想像力を働かせていけば、優しさになる。優しさは想像力だし、想像力は優しさ」

須江監督自身の経験を重ねた言葉もある。「自分の人生は思い通りに行かない」という言葉だ。

「挫折のない人生なんてない。挫折のない人生なんてつまらないんだと話しています。人生の面白さを与えてくれるのは、挫折、失敗という話です」

仙台育英に入学する選手たちは、地域のエリートたちだ。だからこそ、挫折した経験がすごく少なく、打たれ弱いと感じている。日々、挫折を感じることもあるが、それを糧に前に進んでほしいという思いが込められているという。