■役との距離感を語る「役の一番の理解者でいよう」

 そんな坂口が真剣な表情を見せたのが、演技論に話が及んだ場面だ。

 林に「役者としての強みは?」と尋ねられ、「“ふつうさ”が一番難しいなという思いがあって。(現実の)人生から離れれば離れるほど、お芝居として見やすくなる気がするんです」と話し始めた坂口。続けて「たとえばラブストーリーを演じるとなった時に、“他者に愛情を持つこと”ってたぶん皆さんが経験することだから、その人なりの愛情の放出のしかた、愛情の抑え方、それぞれ観るかたが経験してきたことがあると思う。そういう普遍的なもののほうが、いろんなことを細かく考えて演じることが必要なんだろうなと思います」と、自身が考える“ふつうさの演技の難しさ”に言及した。

 さらに、「100%その役になろうというより、(役の)一番の共感者でいよう、役の隣人でいよう、という感覚が強い」とも。日常で誰もが経験する“ふつう”の出来事や感情をじっくり考えて演じるその姿勢、そして100%役になりきらず客観視しようとする一歩引いた視点が彼ならではの唯一無二の存在感を引き出していることが、インタビューで明らかになった。