消費者の「砂糖離れ」で原料の「てん菜」がピンチに。北海道の農業が揺れています。

ハロウィンの10月31日金曜日、札幌の狸小路は若者たちで賑わいました。
一方、駅前のオフィス街でも!
・ギネス会場「じゃあ緑色の文字をお願いします!」(北農ビル・10月31日)
ここは、JAグループ北海道の「北農ビル」。

ロビーに飴玉=キャンディを並べて「世界最大の甘い文章」を作るという、ギネス世界記録に挑んでいます。
仮装した子どもたちや仕事帰りの大人が、慎重かつ大胆に並べて…
・ギネス達成「バンザーイ!バンザーイ!」
スタートから1時間で、キャンディー4858個を使った「10月31日はてん菜・てん菜糖の日」という、あまーい文章を完成。

ギネス世界記録に認定されました。
・参加者
「飴は好きです!これからいっぱいもっと飴食べようと思います」

JAが、世界一を狙うほど、このキャンディにこだわるわけ…
それは材料の砂糖が、いま大ピンチだからです。

・JA北海道中央会 農政対策部 相川健亮 主幹
「国内では砂糖の消費が少しずつ減ってきている。生産者の皆様が一生懸命てん菜を作っていますので」
スイーツをめぐる 甘くない現実を「もうひとホリ」します。
てん菜は「ビート」や「砂糖大根」とも呼ばれる砂糖の原料で、国内で生産しているのは、北海道だけです。

国内産の砂糖の8割は、このてん菜を原料に作られていて、北海道を代表する作物ですが、健康志向の高まりや人工甘味料の広がりを受け、砂糖の需要が落ち込んでいます。
国の方針もあり、てん菜の作付け面積は 36年前の1989年から6割ほどまで減っています。

道内に8か所ある製糖工場のうち十勝の本別町の工場が、2023年生産を停止。
本別町では2027年、大手乳業メーカーの工場も廃止されることが決まっていて、地元の経済に影を落としています。

北海道糖業北見製糖所 清水一所長
「旧本別製糖所の管内で生産されたてん菜の一部は、現在 北見製糖所にも運ばれ砂糖を製造しています」
北海道糖業北見製糖所です。
砂糖は てん菜の収穫が始まる、秋から春にかけて作られます。

クリスマス前、需要が高まるこの時期は、生産真っ盛りです。
北海道糖業北見製糖所 清水一所長
「窓から見えるのが濃縮された糖液。だんだん砂糖に近づいている段階」

工場を集約し、砂糖の製造を続けていますが、生産者や地域に与える不安は小さくありません。
北海道糖業北見製糖所 清水一所長
「工場自体の存続にも影響を及ぶ可能性があるので、生産者・糖業者がいることにより、消費者の方々に砂糖をお届けできています。砂糖の消費についても、ご協力いただければなと…」

遠藤農場 遠藤正人さん(45)
「秋以降に割と低温が続いた影響もあり糖分が少し乗ったような雰囲気は感じていますね」
北見市の農業、遠藤さん夫婦です。
道内の畑作農家の多くは、てん菜と小麦、豆類、ジャガイモを輪作することで、
病害虫の被害や収量の低下を防いでいます。

道内の農家にとって、てん菜は欠かせない作物のひとつです。
遠藤農場 遠藤正人さん(45)
「作付け面積が減っているのは、食べる人も作る人も(てん菜に)少し魅力を感じなくなってしまっているのかな」

北海道が誇る自然の甘みが、需要を取り戻す魅力になると信じています。
遠藤農場 遠藤正人さん(45)
「僕らがよりよいビートを作って、いい発信をしていけば。北海道の優しい甘みを取り過ぎない程度においしく楽しんでもらえたらな」

堀啓知キャスター)
街には、たくさんのスイーツであふれていますが砂糖の消費量は減っているんですね
堀内大輝アナ)
農水省の調査では、2023年の1人当たりの砂糖の消費量は1年間で14.6kgと、20年前に比べて2kg、50年前と比べて10kg減っています。
要因として「健康志向の高まり」で砂糖を控える傾向や、低カロリーの人工甘味料にシフトする消費者が、増えていることが挙げられています。

てん菜の消費拡大の可能性や 今後について、栄養学が専門の帯広畜産大学の福島道広教授は、てん菜糖の副産物には、オリゴ糖や食物繊維などが含まれているため、腸内環境の改善やミネラルの吸収促進などの効果が確認されているとして、様々な用途に応用できる可能性がある作物と話しています。
一方で「砂糖は過剰に摂取すると、余分な糖が脂肪に変換され 肥満の原因になるので、食味を高める利点を生かしつつ、欠点をいかに抑えるか。魅力を広めるには 情報発信が必要」と指摘しています。

堀キャスター)
てん菜は 北海道の基幹作物ですが、私たち道民ですら、砂糖が北海道で作られていることを知らない。地域の大切な作物だという情報も伝わっていない。
これからクリスマスなど、スイーツが楽しめるシーズン。ちょっとだけ意識して、お砂糖を手にとって見る。「地産地消」の良い機会だと思います。














