秋の褒章と叙勲の受章者が発表され、長野県在住では、褒章は7人、叙勲は54人が受章します。このうち、信州の伝統工芸や酒造りなど伝統を受け継ぐ思いとその技を取材しました。

飯山市の鈴木政幸さんは、黄綬褒章を受章します。
田中屋酒造店 大杜氏 鈴木政幸さん:「酒造り日本酒の伝統を守るということ。一・糀、二・酛、三・造りだね」

鈴木さんは、150年以上続く酒蔵・田中屋酒造店で、半世紀にわたり杜氏として酒作りに携わってきました。
機械化が進む今も、鈴木さんは伝統の製法を大切にしています。

田中屋酒造店 大杜氏 鈴木政幸さん:「全部数字で出てくるんですよ、温度計とか室温だとか味だって。やっぱり見て聞いて飲んで覚えてね、五感で酒はできてるんだってことを覚えてないと」

店の顔である「水尾」を一から作り上げた鈴木さん。全国の品評会で最高賞に輝くなど、熟練の技術が高い評価を得てきました。
そうした中、酒蔵に困難が襲いかかります。6年前の台風19号災害です。

千曲川の支流が氾濫。濁流が市街地にまで押し寄せ、酒蔵は最大で1メートルも浸水しました。
その状況に鈴木さんは、酒の仕込みが出来ないことも考えたと言います。
田中屋酒造店 大杜氏 鈴木政幸さん:「私はこれは今シーズンは作れないんじゃないかと思ってたんですよ。でもありがたいのは、長野からうちの酒を飲んでいる人たちが30人くらい押し寄せてくれて、ボランティアで来て1週間くらい拭き掃除やってくれたんですよ。本当にうれしかったです」
蔵人たちを再び酒造りに向かわせたのは、ボランティアの力でした。急ピッチで酒蔵を洗浄し、被災からわずか1か月半で酒造りを再開させました。

田中屋酒造店 大杜氏 鈴木政幸さん:「ありがたかったですよ、本当に本当にうれしかった。こんなにも人の優しさっていうものが、こんなにも人の心を動かすんだと思ったね。ありがたかったですね」
4年前、高齢を理由に杜氏の職を後進に譲った鈴木さん。

田中屋酒造店 杜氏 久保田剛光さん:「ほぼ五感で経験でやってきている時代。技術力や感性がかなり研ぎ澄まされていたんだなと思います」
今は大杜氏として酒造りを導き、蔵を見守っています。

田中屋酒造店 大杜氏 鈴木政幸さん:「のど越しがね、あれいつの間にかどっかへいっちゃった。これが感覚、いいんです。そういうやつの方が胃袋いってね、甘さがわかる。おい鈴木、いま出ている酒はうまい酒だなって言われると嬉しいですね」
【SBCニュースワイド11月3日放送】














