「わからないをわかるまで」

小川彩佳キャスター:
新曲の「23、24」は夜11時という時間帯にこだわって作ってくださったそうですね。

尾崎世界観さん:
そうですね。子どもの頃から「news23」を見ていて、小さい頃の23時というのはすごく未知の世界で、その時間に起きているだけで嬉しかったんですが、大人になって色々なことを考えながら、当たり前に23時が来て、色々な苦しさや悩みなども抱えながら生活していて。まずこの“23時”というものを描きたいと思い、歌詞を考えているときに、時計の11時のところを見ながら、自然と首をかしげているのに気づいたんです。11時って、針自体も何か迷っている感じがするなと思って。何か釈然としない感じというか。

そういう時間だからこそ、その時間に自分はいろんな気持ちを乗せることができるんだと思い、23時~24時までの、この番組がちょうど終わる頃に、傾いてた部分がちょっとでもまっすぐになるような、それごと引きずって明日に行けるような曲にしたいと思って作りました。

喜入友浩キャスター:
そういった思いを歌詞に、音に、テンポに込められたと思いますが、歌詞の後半に出てくる「わからないをわかるまで」という言葉がすごく印象的でした。

尾崎世界観さん:
今はすごく答えを求められる時代で、いくらでも答えが手に入ってしまう時代だと思っています。それらしくはっきり言い切る人が人気ですよね。YouTubeとかでも再生数が伸びたり。

だから何かを言い切らなきゃいけないという風潮があると思うんですが、自分は何かを言い切れる人よりも、すごく迷って悩みながら、自信がないけれど、これかもしれないと思ってやっと発言するような人に惹かれるんです。そして、自分自身も表現者としてそういう人間でありたいと思っています。

でも、今回このような機会をいただいた以上は、何かを見つけたいと思った。そんな時に「わからないをわかればいいんだ」と気づいて、そこから書き進めた歌詞です。

小川彩佳キャスター:
私たちが伝えるときのジレンマと重なりますよね。

トラウデン直美さん:
私もこの曲を聴かせていただいたとき、すぐにうるっとしてしまったのですが、最初の歌詞に「23時の角度に首を傾げて」とあります。番組のスタッフの皆さんの「こうやって伝えればいいのかな」と本当に誠実に悩みながらニュースを伝えていこうとしている姿勢が浮かんできて、胸が熱くなりました。

尾崎さんの捉える力って本当にすごいなと思うのですが、歌詞を書かれるときにはどのようなことを意識されるのでしょうか。

尾崎世界観さん:
何かをはっきり言い切るというよりは、ぶれていきたいというか。色々なニュースに触れるたびに揺れるし、それで微動だにしないのがかっこいいのではなくて、ちゃんと色々な人の声や出来事に触れながら、自分がちゃんと揺れていくというのはすごく大事だと思います。そういう自分を通して、その気持ちを素直に歌にしていきたいです。