積極投資で給料上がる?“アベノミクス”と“サナエノミクス”比べてみると

井上キャスター:
なかなか循環に繋がらないというのは安倍政権のときから報道がなされていましたが、“アベノミクス”と“サナエノミクス”どのような違いがあるのでしょうか。

“アベノミクス”はデフレを脱却することを目指すために、低金利政策を打ってきました。低金利にすることで大企業はお金を借りやすく、お金が回っていくということで、それが中小にまわり、「皆さんのお給料が上がるまで待ってください」という話でした。

しかし、大企業が受けた恩恵は大きかったものの、それに比べて国民の恩恵は小さかった。この部分の具体策が欲しいということで、“サナエノミクス”は積極財政で経済を底上げするようです。

高市総理は投資先の具体案を示したと言われています。今までは、借りやすくする、経済を回す、デフレを脱却するということはできていたけれども、具体的にどういうところに成長を促していくのかが問題でした。

高市総理は半導体、造船、地方中小企業をとにかく後押しし、賃上げをしていきたいということです。経済アナリストの馬渕磨理子さんは、「経営者は成長のビジョンが見えるので、賃上げに繋がる」と見ています。

一方、株がよく回っていくだけでは駄目で、円安が進んでいってしまうと、よりインフレが加速してしまうという指摘もあります。「物価を下げる基本的な対策は利上げだが、高市総理は利上げに慎重」と星浩さんは見ています。

高市さんの言動を見ていると、物価を下げるということより、物価高はある程度仕方ないけれど、それに見合うだけの賃金をどう上昇させるのかという考え方のような気がします。

斎藤幸平 准教授:
やはり、利上げができず「株高株高」とアベノミクスから言っている時代で、結局産業の転換が起きないまま、円の実力が下がってきているところまで来ていると思います。

このまま、また積極財政で利下げみたいな形になり円安が加速してしまえば、インフレで人々の暮らしはますます減税よりも苦しくなるし、さらには外国人たちによってもっと日本が安く、オーバーツーリズムとか、土地が買われるみたいなことになってしまえば、「これが愛国保守なのか?」という声は上がってくると思います。

井上キャスター:
このままいくと、日本が安く貧しくなってしまうのではないかということでしょうか。

斎藤幸平 准教授:
それを加速させてしまうような、インフレ下での積極財政にはそういうリスクがやはりあるのではないかということですね。

井上キャスター:
一方で政府としては、やはり経済を回して成長させて、もう一度豊かな国にしたいというところがどうなっていくのか、分岐点を迎えています。

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<プロフィール>
斎藤幸平
東京大学准教授
専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破